<W解説>南北破綻を印象付ける、開城工業地区支援財団の解散
<W解説>南北破綻を印象付ける、開城工業地区支援財団の解散
韓国と北朝鮮が共同で運営し、2016年2月から操業が中断している北朝鮮南部・ケソン(開城)の開城工業団地をめぐり、団地の運営を支援してきた韓国の開城工業地区支援財団が近く解散することになった。同団地の運営は韓国と北朝鮮の経済協力を象徴する事業だったが、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)政権は南北交流・協力分野の縮小を進めており、財団の解散もその一環。一方、米メディアの報道によると、かつて同団地内にあり、2020年6月に北朝鮮が一方的に爆破した南北共同連絡事務所のがれきの撤去作業がこのほど完了したとみられる。作業は北朝鮮によって昨年初めごろから続けられてきたが、韓国統一部(部は省に相当)は「我々の財産権に対する侵害を続けている」と非難し、即刻中止を求めてきた。かつて融和や協力の象徴だった同地をめぐる一連の動きは、今や南北の破綻を強く印象付けている。

開城工業団地は、北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)国防委員長と韓国のキム・デジュン(金大中)大統領(肩書はいずれも当時)との合意に基づき、南北軍事境界線に近い開城郊外に造成された韓国企業向け工業団地。基本的に北朝鮮が土地と労働力、韓国が資金と技術力を提供するとの合意の下、2004年に操業を開始した。団地内では繊維や機械、金属、電子部品などが生産され、規模は年々拡大。生産額は2005年に1491万ドル(約20億円)、2006年7347万ドル、2007年1億8478万ドル、2008年に2億5142万ドル、2009年には2億5647万ドルに上った。2010年には韓国の中小企業121社が生産を行い、韓国人労働者約800人、北朝鮮労働者約4万4000人が従事した。

しかし、2013年2月に北朝鮮が地下核実験を強行したことがきっかけで両国関係が悪化。同年4~9月半ばまで操業停止に陥った。その後に再開するも、北朝鮮による核ミサイル開発の資金源を断つため、2016年2月、韓国のパク・クネ(朴槿恵)政権が再び操業停止を決めた。

2018年9月の南北首脳会談で操業を再開させることで合意したが、その後、南北関係はまたも悪化。そして2020年6月9日、北朝鮮は団地内にあった南北共同連絡事務所を爆破させた。南北融和の象徴ともされた建物が木っ端みじんに破壊される映像は世界に衝撃を与えた。

政権公約として南北融和を掲げたムン・ジェイン(文在寅)前大統領は南北経済共同体の構築に向け「朝鮮半島新経済地図」などの構想を通じて、開城工業団地の再開を含む対北アプローチを試みた。しかし、北朝鮮はミサイル開発を続け、特に2019年2月の米朝首脳会談の決裂で南北関係が一気に悪化して以降は南北の経済交流は途絶え、工業団地の操業停止が続いてきた。

しかし、北朝鮮は韓国側に無断で団地内の施設を稼働させていることがこれまでに確認されている。統一部は昨年12月、その数は約30施設に上ると明らかにし、「南北合意の明らかな違反であり、相互尊重と信頼の土台を根本的に損なう行為」と指摘。直ちに中止するよう求めた。

同団地の運営は、統一部の外郭団体として2007年に設立した開城工業地区支援財団が支援してきた。財団は団地の入居企業の許認可や団地への出入り、施設の管理などを担ってきたが、2016年に団地の稼働が中断してから事実上、業務はなかった。財団の維持には年間約70億ウォン(約7億8800万円)かかり、予算の無駄遣いとの指摘も出ていた。

聯合ニュースが統一部の当局者への取材を基に伝えたところによると、昨年末に財団の解散が決まった。今月12日、財団の業務を民間に委託する内容の改正案が閣議決定。財団は早ければ20日ごろに解散する見通しだ。解散後、業務は南北交流協力支援協会に委託される。

一方、財団は団地内の技術支援センターや浄・排水場など1000億ウォン以上の資産を保有しているが、これら財団に対する債権は同協会ではなく清算法人が管理する。
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