<W解説>韓国・ソウルの景福宮への落書き、10代少年らが背負うことになった重い代償
<W解説>韓国・ソウルの景福宮への落書き、10代少年らが背負うことになった重い代償
韓国・ソウルにある朝鮮王朝時代の王宮「キョンボックン(景福宮)」の壁に先月、落書きがされた事件で、文化財庁は犯行に及んだ10代の少年と20代の男に、損害賠償を請求することを決めた。韓国メディアが伝えた。請求額は約1億ウォン(約1100万円)に上る見通し。一方、落書きをした少年が犯行に使ったスプレーは2000ウォン(約220円)で、韓国メディアはその代償の大きさを伝えている。

先月16日、景福宮西門・迎秋門付近の壁にスプレーで落書きされているのが見つかった。壁には「映画無料」との文字や、違法動画共有サイトのアドレスが書かれていた。その後、警察は、文化財保護法違反の疑いで10代の男女を拘束した。警察の調べに、男女は見知らぬ人物からメッセージングアプリの「テレグラム」を通じ、「落書きをすれば金をやる」と持ちかけられ、犯行に及んだと供述した。韓国メディアによると、二人は犯行前に計10万ウォンを受け取った。犯行後には数百万ウォンを受け取ることになっていたが、落書きを持ちかけた人物とその後連絡が取れなくなったという。二人はその後、未成年者であることで逮捕状が棄却された。

この落書きが見つかった翌17日にも景福宮ではまた新たな落書きが発見された。文化財庁が現場で消去、復旧作業に当たる中、作業現場に近い場所で再び同様の事件が起きたことに驚きが広がった。景福宮・迎秋門の壁にスプレーで歌手の名前やアルバム名が落書きされていた。18日、20代の男が警察に出頭し、文化財保護法違反の疑いで逮捕された。同法は、国宝や宝物、史跡、名勝などの指定文化財に文字を書いたり絵を描いたりする行為を禁じている。違反した場合、3年以上の懲役が科せられる。また、毀損(きそん)された文化財を現状復旧するためにかかった費用を請求することもあると定めている。

景福宮は1395年に朝鮮王朝の初代国王、イ・ソンゲ(李成桂)によって建てられた朝鮮王朝の王宮で、5つの宮殿からなる。ソウルにある五大王宮の中でも最大規模を誇り、敷地内には国立民俗博物館もある人気の観光スポットだ。

事件発覚直後から、国立古宮博物館や国立文化財研究院の専門家らによって復旧作業が進められてきたが、今月4日、作業のために覆われていたフェンスが撤去され、外壁が公開された。ただ、この時点で状態は元の8割程度で、今後、石材の表面や色の変化の状態などを見ながら第2段階の保存処理作業が進められる。しかし、100%元の状態にすることはできないという。韓国紙の中央日報によると、現場で作業の陣頭指揮に当たった国立文化財研究院文化財保存科学センターのイ・テジョン学芸研究家は、同紙の取材に「塀の石を構成する粒子と粒子の間の隙間に四酸化三鉛のような顔料成分がしみ込んでしまった。これを除去するには塀そのものを作り替えるほかない。大きな違和感がない程度にだけはしなければならない。仕方がない」と話した。

聯合ニュースによると、作業は計8日間行われ、消去作業には延べ234人、1日平均29.3人が投入された。費用は、スチーム洗浄機やレーザー洗浄機などのレンタルに946万ウォン、作業に必要な防塵服や手袋、作業靴などに計1207万ウォンの計2153万ウォンかかったという。聯合は「作業に携わった専門家の人件費などを含めると、費用は大幅に膨らむ見通しだ」と伝えている。

文化財庁は今後、犯人に損害賠償を請求することにしている。韓国メディアのニュース1は「実際に請求されれば、2020年の文化財保護法改正後、初めての事例となる」と報じた。2件目の落書きをした疑いのある20代の男はもちろん、1件目の落書きをした疑いのある10代の少年も対象で、弁済能力がない場合、親に請求する見通しという。

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