<W解説>1か月ぶりにミサイルを発射した北朝鮮=26日のサッカーW杯予選は平穏な環境をつくれるか?
<W解説>1か月ぶりにミサイルを発射した北朝鮮=26日のサッカーW杯予選は平穏な環境をつくれるか?
北朝鮮が今月18日午前、弾道ミサイル3発を発射した。北朝鮮がミサイルを発射したのは2月14日以来。また、国連安全保障理事会で禁止されている弾道ミサイルの発射は1月14日以来で、今年に入って2回目。今回の発射は、米韓両軍が今月14日まで定例の合同軍事演習を行ったことを受け、北朝鮮がこれに対抗姿勢を示したとの指摘のほか、韓国・ソウルで開催されている「民主主義サミット」のために訪韓したブリンケン米国務長官を威嚇する意図があったとの見方も出ている。また、4月に韓国で行われる総選挙を前に挑発した可能性も指摘されている。一方、日本の国会では、今月26日に北朝鮮の首都・ピョンヤン(平壌)で2026年サッカーワールドカップ(W杯)アジア2次予選の日本対北朝鮮戦が行われることから、懸念の声も上がった。

弾道ミサイル3発は、北朝鮮西岸付近から北東方向に発射され、いずれも日本のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下したとみられる。最高高度はいずれも約50キロ、飛翔距離は300キロ程度。韓国の聯合ニュースは、平壌から韓国の陸・海・空軍の本部がある中部のケリョンデ(鶏龍台)までの直線距離は約330キロ、南西部のクンサン(群山)にある在韓米軍の第8戦闘飛行団までの距離が約350キロだとし、今回の発射について「飛行距離から、韓国にある主な軍事施設への攻撃を念頭に置いたものとみられる」と伝えた。

韓国軍合同参謀本部は「朝鮮半島の平和と安定を深刻に脅かす明白な挑発行為であり、強く非難する。強固な韓米連合防衛体制の下で北のさまざまな活動を注視しながら、いかなる挑発にも圧倒的に対応できる能力と態勢を維持する」と強調した。また、日本政府も「一連の北朝鮮の行動は、わが国、地域、および国際社会の平和と安定を脅かすもので、安保理決議に違反し、国民の安全にかかわる重大な問題だ」と非難。北朝鮮に対し、厳重に抗議したことを明らかにした。

北朝鮮がミサイルを発射したのは2月14日以来で、約1か月ぶりの挑発となった。発射の意図については前述のようにさまざまな見方が出ている。米国のブリンケン国務長官が訪韓したことに合わせ、軍事力を誇示しようとしたとの指摘もそのうちの一つだ。そのブリンケン氏は18日、韓国外交部(外務省に相当)のチョ・テヨル長官と会談し、北朝鮮のミサイル発射を非難。北朝鮮への対応で、連携することを確認した。

一方、日本の国会では18日、立憲民主党の古賀之士氏が今回のミサイル発射と、26日に北朝鮮の平壌で予定されているサッカーの2026年W杯アジア2次予選の日本対北朝鮮戦に触れ、岸田文雄首相に対し「これは極めて重要な問題だ。わが国の国民をしっかりと守っていくという決断、約束をしてほしい」と求めた。これに対し、岸田首相は「政府として自国の国民の命、暮らしを守ることは最も重要な責務だ」とした上で、「課題や状況に合わせて、政府として最大限の努力を行う。これは当然のことだ」と述べた。

日本が北朝鮮とアウェーで対戦する試合をめぐっては、平壌で開催されることが今月11日にようやく正式決定した。日本と北朝鮮の間に飛行機の定期便がないことや、競技運営の観点から不透明な点も多いことから北朝鮮で公式戦を行うことは常に困難が伴う。今月2日、アジアサッカー連盟(AFC)の視察団が平壌入りし、試合会場として予定されているキム・イルソン(金日成)競技場を視察。スタジアムの状態などを確認した結果、予定通り同競技場で試合を行うことを決めた。日本代表の試合が北朝鮮で行われるのは、2011年11月のブラジルW杯アジア3次予選以来、13年ぶりとなる。当時、試合が行われた金日成競技場には約5万人の観衆が集まり、日本代表はブーイングに悩まされた。過酷なアウェー戦に苦戦し、日本は0-1で敗れた。

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