<W解説>1年9か月ぶりに記者会見に応じた韓国・尹大統領=就任から2年、求められる「対話重視」の姿勢
<W解説>1年9か月ぶりに記者会見に応じた韓国・尹大統領=就任から2年、求められる「対話重視」の姿勢
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が、本日10日で就任から2年を迎えるのを前に、9日、大統領室で記者会見した。尹氏が会見を行うのは、外国首脳との共同会見などを除けば約2年ぶり。対日関係についても言及し、今後も関係改善を進めていく考えを示した。

会見で尹氏は、先月10日の総選挙で、政権を支える与党「国民の力」が大敗したことに関連し、「国民の生活を改善する政府の努力が不足していた」と反省を口にした。残り3年の任期では経済の改善を重視するとし、「企業の成長や雇用創出も重要だが、それ以上に重要なのは、一人一人の生活で不都合な点を探し、それを解決するために一層努力することだと考えている」と述べた。

また、社会問題となっている少子化についても言及した。韓国は昨年、出生率が0.72となり過去最低を更新。尹氏はこの状況について「国家の非常事態と言える」とした上で、対応を強化するため、副首相をトップとする専門の省を立ち上げる考えを示した。現在、少子高齢化に関する政策は少子高齢社会委員会が担っているが、これを省に格上げする。尹氏は、設立には法改正が必要だとして、国会の協力を求めた。

また、対日関係について尹氏は、「韓日は過去の歴史や懸案に関する両国国民の立場の違いが確実に存在する」とした一方、「両国の未来や未来世代のためどうすべきかを考えなければならない。われわれの未来のため、具体的には北の核への対応や両国の経済協力のため、インド太平洋地域と国際社会でのリーダーシップのため協力しなければならない」と強調。今後も関係改善を進めていく考えを示した。日韓首脳は昨年、首脳同士の相互訪問「シャトル外交」の再開で合意。昨年は尹氏が3月に日本を訪問したのに続き、5月には岸田文雄首相が訪韓した。首脳会談はその後も回数を重ね、昨年1年間だけでも7回にも上った。尹氏は9日の会見で「岸田首相とは互いに十分信頼し、両国関係を発展させる姿勢が十分にあることも互いによく知っている」とも述べた。

そのほか尹氏は、キム・ゴンヒ(金建希)夫人をめぐる疑惑についても言及した。金氏をめぐっては、尹大統領就任後の2022年9月に、在米韓国人の牧師から高級ブランドバッグを受け取ったとされる疑惑がある。韓国では公務員やその配偶者が職務と関連して一定額以上の金品を受け取ることを禁じる「不正請託防止法」があり、同法違反の疑いが指摘されている。昨年11月、尹政権に批判的なユーチューブチャンネルで、その一部始終を収めたとする動画が公開された。ソウル中央地検には捜査チームが立ち上がっており、イ・ウォンソク検事総長は今月7日、「証拠と法理に基づいて迅速かつ厳正に捜査し、処分する」と述べ、捜査を通じて真相究明を図る考えを強調した。尹氏は会見で「妻の行動で心配をかけ、謝罪する」とした一方、検察が捜査に着手したことについては「公正かつ厳正にしっかり行うものと考えている」と述べるにとどめ、具体的な言及を避けた。

尹氏が公式の記者会見に臨むのは2022年8月以来のことだった。ムン・ジェイン(文在寅)前大統領は新年や就任から1年ごとの節目に記者会見に応じたが、尹氏は歴代の大統領の中でも会見を開く回数がこれまで特に少ない。韓国では、先月10日に総選挙が行われ、尹政権を支える与党「国民の力」が大敗したが、その要因の一つに尹氏の独善的な政権運営が影響したとも指摘されていた。尹氏は総選挙後、「今回の総選挙で明らかになった民意を皆が謙虚に受け止めなければならない。より低姿勢かつ柔軟な態度で、より密にコミュニケーションを取り、私から民意に耳を傾ける」と宣言した。今回の会見は「対話重視」への転換をアピールする狙いもあったものとみられる。

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