
子供の頃にアルセーヌ・ルパンのシリーズを読んで推理小説の世界に魅了された人なら、ノルマンディの町エトルタ(Étretat)を訪れたいと思ったことがあるでしょう。
エトルタには現在博物館となっているルパンの生みの親モーリス・ルブランの家があり、有名なエピソード「奇巌城」で謎解きの舞台となった海岸は2025年現在も幸いそのストーリーに思いを馳せるに十分な姿を残しています。

「幸い」というのはご多分に漏れず、ここエトルタの海岸線も浸食により毎年少しずつその姿が変わってきているからです。
特にエトルタのシンボルである象の鼻のように突き出た部分や、その向こうに見える円錐形の岩は、一見して侵食の影響を受けやすそうだと分かります。
この自然現象に加え、もう1つエトルタ村の悩みの種となっているのが観光客の大きすぎる波なのです。

アルセーヌ・ルパンがある程度まとまった本となって出版されたのが1907年。
それから大小のブームがあり、最近では2021年にNETFLIXでの配信が再びルパンフィーバーに火をつけました。
こうしてわずか4km²の面積と、それに見合った程度の道幅しかないエトルタ村に年間150万人、1日4000人余の観光客がマイカー等で押し寄せるとなれば、村に起きる困難は想像に難くありません。

岸壁上では石の滑落の加速化や慣れない観光客の事故、中心部での大渋滞、無料のお土産として1日30㎏消えるとも推定されるガレ(ノルマンディーの海岸を覆う特徴的な丸石)・・・。
そんな大きな課題を前に村長さんは勿論ですが、村人の日常生活と折り合いをつけていこうとアソシエーションを立ち上げた村人もいます。

もしルパンの聖地巡礼を静かな雰囲気の中で実現したいのであれば、とりあえず8月は避けましょう。
尚、ノルマンディーの海岸線の街、ル・アーヴルとフェカンを結ぶ公共バスがエトルタにも止まります。
ノルマンディーののどかな風景を保ち、且つ秩序ある観光も楽しめる策が進んでいくことを願わずにはいられません。
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