<W解説>G7サミット参加で外交デビューを果たした韓国・李在明大統領=政府関係者が強調した成果は?
<W解説>G7サミット参加で外交デビューを果たした韓国・李在明大統領=政府関係者が強調した成果は?
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領が、カナダ西部カナナスキスで開かれていた先進7か国首脳会議(G7サミット)を終え、19日、帰国した。今月4日に大統領に就任した李氏にとっては今回のG7サミット参加が対面外交デビューとなった。李氏は石破茂首相と初の首脳会談を行うなど、現地に滞在中、9か国・地域の首脳と経済など多様な分野の協力強化策について話し合った。

韓国は今年、2年ぶりにG7サミットに招待された。韓国はG7メンバーではないが、これまで英国が議長国を務めた2021年と、日本が議長国だった2023年のG7サミットに招かれ出席した。一方、昨年6月にイタリアで開かれたG7サミットに、韓国は招待されなかった。

韓国は昨年12月に尹前大統領が「非常戒厳」を宣言して以降、国内政治の立て直しが最優先となり、首脳外交は中断した。今回のG7サミットへの参加は、韓国の民主主義の回復を世界にアピールする絶好の機会となった。

しかし、当初、今回のサミット参加に関して、李政権内では、李氏が大統領就任直後であることに加え、外交・安全保障分野も含めた人事も進行中であることから、参加を見送って内政に集中すべきとの意見もあったという。李氏自身も当初は不参加も考えたというが、尹前大統領が「非常戒厳」を宣言して以降、混乱した韓国が正常化したことを示す必要があるなどとして参加に踏み切った。

李氏はG7サミットで、エネルギー供給網(サプライチェーン)問題や人工知能(AI)時代の国際社会の課題をめぐる韓国の役割を紹介した。

現地に2日間滞在中、9か国・地域の首脳と個別に会談。17日午後(日本時間18日午前)には石破首相との日韓首脳会談が行われた。会談の冒頭、石破氏は李氏に対し、大統領就任に祝意を示した。その上で「今年は日韓国交正常化60年という記念すべき年だ。政府や企業だけでなく、国民同士の交流も盛んになり、日韓の連携・協力が地域、世界のために大きな力となることを期待している」と述べた。李氏は両国の関係について「わが国では日本と韓国の関係を『近くて遠い国』とも呼ぶ。まるで庭を一緒に使う隣人のように、切っても切り離せない関係だ」とした上で「小さな違い、意見の違いがあるが、その違いを越えて、両国が様々な面で互いに協力し、役に立つ関係へとさらに発展していくことを期待している」と述べた。

両首脳は国交正常化60周年に合わせ、強固で成熟した関係を築いていくことを確認。経済や文化などの分野で協力策を議論する必要性でも一致した。また、首脳の相互往来「シャトル外交」を再開し、日韓関係の安定的発展を目指す考えも確認した。

石破氏は会談後の記者会見で、日韓関係に関し、「日本と韓国は互いに国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国であり、現下の戦略環境の元、日韓関係、日米韓協力の重要性は全く変わるものではない。より重要になっている」と強調した。毎日新聞によると、韓国政府関係者は「友好的な会談だった。韓日が協力関係に向かっていくとの明確なシグナルだ」と強調したという。

石破氏と李氏との間では初めて開かれた日韓首脳会談について、読売新聞は「尹錫悦前政権下で進んだ日韓関係強化の路線が継続する方向となった」と伝えた。李氏はこれまで日本に対し、批判的な発言が多かったが、「国益中心の実用外交」を掲げ、最近は「反日色」も封印。会談では、歴史認識の問題について意見を交わしたとみられるものの、毎日新聞が韓国政府関係者の話として伝えたところによると、議論の中心ではなかったという。

G7サミットへの参加で外交デビューを果たした李氏。関心を集めていたトランプ米大統領との初会談は、トランプ氏が中東情勢への対応を優先して予定を繰り上げて帰国したため実現しなかったが、各国の首脳と親交を深め、国際情勢などの懸案について意見を交わした。韓国大統領室のウィ・ソンラク国家安保室長は李氏のカナダでの日程終了後、現地で記者会見し、「韓国の首脳外交は完全に復活した」と述べた。韓国の通信社、聯合ニュースによると、大統領室は、李氏の今回のG7サミット参加の成果として、韓国の民主主義が回復し、首脳外交が復活したことを国際社会に知らせた点を挙げているという。また、李氏が掲げる「国益中心の実用外交」が、第一歩を踏み出したことにも意味があると強調している。
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