<W解説>後継者との見方が強い、北朝鮮・金総書記の娘ジュエ氏=父の北京訪問に同行し国際デビュー
<W解説>後継者との見方が強い、北朝鮮・金総書記の娘ジュエ氏=父の北京訪問に同行し国際デビュー
このほど中国・北京で開かれた抗日戦争勝利80年の記念式典に、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が出席した中、金氏の訪中に、娘のキム・ジュエ氏が同行したことが注目されている。父の外遊に同行するジュエ氏の姿が確認されたのは初めて。後継者として国内外にアピールする狙いがあったとの見方が出ている。

式典には新興・途上国を中心に計26カ国の首脳級が出席したほか、これらの国以外の政府関係者や元首脳、国際機関の幹部らも参列した。日本からは鳩山由紀夫元首相、韓国からは、ウ・ウォンシク国会議長が出席した。天安門広場で開かれた式典では、天安門楼上に北朝鮮の金総書記とロシアのプーチン大統領が習氏の両隣に並び、中ロ朝の結束を誇示した。

北朝鮮メディアは金氏の式典出席を大々的に報じた。今月4日付の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、金氏が習氏と握手を交わす場面の写真など、1面から3面にかけて37枚の写真を掲載。3日の軍事パレードでは金氏が「対日戦争に参加した老兵たちを温かく祝った」などと伝えた。

今回の金氏の中国訪問には、娘のジュエ氏が同行した。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信が2日に配信した、金氏が北京に到着した際の写真からは、金氏の後ろに立つジュエ氏の姿が確認できる。

ジュエ氏が公の場に初めて姿を見せたのは、2022年11月のことだった。当時、北朝鮮の労働新聞などは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星17」の発射に成功したと報じる記事の中で、「火星17」の前を白いダウンコート姿のジュエ氏が金氏と手をつないで歩く写真などを公開。「『愛するお子様』が同行した」と伝えた。

その後もジュエ氏は金氏の軍事分野の視察に同行するなど、その姿が北朝鮮メディアを通じて度々公開されてきた。北朝鮮指導者の子どもがこれほど早くから公の場に登場することは過去になく、国家機関の一員となるまでは人目に触れないようにしておくという従来の慣例からすると異例な状況となっている。

金氏はリ・ソルジュ(李雪主)夫人との間に3人の子供がいるとされ、当初、ジュエ氏は金氏の第2子との見方が有力だった。しかし、韓国政府系のシンクタンク、統一研究院の院長は2023年5月、ジュエ氏が第1子の可能性が高いとし、「後継者の候補に含まれているとみている」との見方を示した。ジュエ氏が公の場に頻繁に登場しているのも、「(金氏の祖父、金日成主席の直系を示す)白頭(ペクトゥ)血統」の正当性を示す狙いがあるとみられている。

しかし、北朝鮮メディアは金氏の娘の存在は認めているものの、「愛するお子様」、「尊いお子様」、「尊敬するお子様」などと表現しており、これまで一度も娘の名前が「ジュエ」とは伝えていない。

韓国の国家情報院は昨年1月、ジュエ氏について、「有力な後継者とみられる」との見解を示した。さらに国家情報院は同年7月、ジュエ氏が「後継者教育を受けている」とする分析結果を国会に報告した。ただ、他のきょうだいが後継者になる可能性も排除しなかった。同年11月には、もう一段階踏み込み、ジュエ氏について「地位の格が上がっている」との見方を示した。ジュエ氏が党の行事で金氏の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏の案内を受けたり、チェ・ソンヒ(崔善姫)外相の補佐を受けたりしていることなどを根拠に挙げた。

今回、金氏の中国訪問に同行したジュエ氏は、これが初めての外遊になったとみられている。しかし、抗日戦争80年記念の一連の行事にジュエ氏の姿はなかった。韓国紙の東亜日報は「ジュエ氏の訪中は、直接的な外交行事への参加というよりも、広い意味での後継者教育との見方もある」と伝えた。

中国を訪問した金氏は専用列車で帰国し、5日、ピョンヤン(平壌)に到着した。朝鮮中央通信は金親子らが北京に到着した場面の写真に続き、同日、金氏とその後に続いて列車を降りるジュエ氏が写った写真を配信した。

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