<W解説>旧統一教会の韓総裁逮捕、政界との癒着は解明されるのか?
<W解説>旧統一教会の韓総裁逮捕、政界との癒着は解明されるのか?
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領夫妻をめぐる疑惑を捜査している特別検察官の捜査チームは今月23日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のトップ、ハン・ハクチャ(韓鶴子)総裁を政治資金法違反などの疑いで逮捕した。捜査チームは、教団と尹前政権の癒着疑惑を捜査している。韓氏の逮捕は事件の全容解明に向け大きな弾みとなりそうだ。一方、教団をめぐり、日本では高額献金が社会問題化したほか、自民党との不明瞭な関係が明らかになっている。2023年10月、文部科学省が宗教法人法に基づく解散命令を請求。東京地裁は今年3月、解散を命じる決定を出した。東京新聞は「韓国での捜査が注目されるが、無視できないのが日本での教団側と政治、特に自民党とのつながりだ」と指摘した。

韓氏は旧統一教会の世界本部長を務めた元幹部と共謀し、2022年1月に、尹前大統領の側近の一人で、最大野党「国民の力」所属の国会議員、クォン・ソンドン(権性東)氏に政治資金1億ウォン(約1060万円)を渡し、教団への支援を求めた疑いがもたれている。また、呪術師を通じて、尹前大統領の妻、キム・ゴンヒ(金建希)氏に高級ダイヤモンドのネックレスやシャネルのバッグを渡し、旧統一教会の事業に便宜を図るよう依頼した疑いもある。

韓氏は82歳。日本の植民地時代の1943年に、現在の北朝鮮で生まれた。17歳の時に、当時40歳だった教団の創設者、ムン・ソンミョン(文鮮明)氏と結婚、7男7女をもうけた。旧統一教会内では「真(まこと)のお母様」と呼ばれ、組織を主導してきた。2012年に文氏が死去した後、教団トップに君臨し、強い影響力を持ってきた。

特別検察官の捜査チームは今月17日、韓氏を約9時間半にわたって取り調べた。終了後、権氏に1億ウォンを渡した理由を報道陣に問われ、「私にそのようなことをする理由がありますか」などと問い返した。18日、捜査チームは政治資金法違反、請託禁止法違反、証拠隠滅教唆、業務上横領の4つの容疑で韓氏の逮捕状を請求。22日には、ソウル中央裁判所で韓氏の逮捕状発付の是非を判断する審査が行われた。韓氏は約5時間に及んだ審査で、「韓国の政治に関心はなく、政治について知らない。私は超宗教的指導者で、世界に平和を伝えるために一生を捧げてきた」と話したという。一方、元幹部がしたことで国内を騒がせていることについては、申し訳なく思っていると述べたとされる。その後、韓氏は23日未明に逮捕された。

韓国の通信社、聯合ニュースによると、韓氏は、24日午後に特別検察官の事務所に出頭して約4時間半にわたる取り調べを受けたものの、26日は健康上の問題を理由に出頭しなかった。韓氏はこれまで容疑を否認している。

捜査チームは教団と尹前政権時の与党「国民の力」との癒着を調べており、今月18日には、同党の全党員のうち、旧統一教会の信者とされる11万人分の党員名簿を確保した。韓国紙のハンギョレは、韓氏の拘束を機に「当時の政権与党の『政教癒着』疑惑についての捜査を本格化させるものとみられる」と伝えた。

一方、旧統一教会をめぐり、日本では2022年の安倍晋三元首相の銃撃事件で自民党との関係が問題となった。信者の高額献金も社会問題化した。韓氏の逮捕を受け、全国統一教会被害対策弁護団は23日、声明を発表。「日本からの資金の流れや日本法人への指示内容なども含め、組織の実態や違法・不正行為の内実についても徹底的に解明することを強く期待する」とした。一方、教団の日本本部も同日、X(旧ツイッター)で、韓総裁には逃亡や証拠隠滅の恐れもないとした上で、「このような事態となったことは誠に遺憾」とのコメントを投稿した。

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