火災は先月26日、午後8時20分ごろ発生。メンテナンス中のバッテリーが爆発したことが原因とみられている。出火当時、現場では作業員がバッテリーの交換作業をしていた。情報管理院では647の国民向け行政サービスが稼働しているが、火災の影響で停止。モバイル身分証明書や、郵便局のインターネットサービスなど、市民向けのシステムがまひし、大混乱に陥った。
火災で停止した政府の647の行政情報システムは順次復旧しているが、全システムの復旧までにはかなりの時間を要するとみられている。韓国政府は先月29日、完全復旧までに約4週間かかるとの見通しを示した。
また、情報機関の国家情報院は、システム障害の混乱に乗じたハッキングへの監視を強化する必要があるとの判断から、国のサイバーセキュリティに深刻な影響を及ぼす可能性のある状況を予測して注意を促す「サイバー危機警報」を「関心」から「注意」に1段階引き上げた。同警報は「正常」「関心」「注意」「警戒」「深刻」の5段階に分けられている。
韓国紙のハンギョレは「韓国政府は、(1件の)火災で国民サービスが全く機能しなくなったことに関して批判を避けられなくなった」とした上で、「行政安全部(部は省に相当)は2年前、政府の電算ネットワーク障害事故後に対策を発表し『障害発生時、3時間以内の復旧』を約束したが、結果的に今回の事故に対応できなかった」と指摘した。中央日報は「デジタル政府の心臓の役割をするこうした機関の機能がバッテリー火災ひとつで崩れたのは、国家の危機管理に大きな穴が開いていることを示すものだ」と指摘。「政府が自慢してきた『国連認定優秀電子政府』の素顔が明らかになったのだ」とした。
行政安全部(部は省に相当)のユン・ホジュン長官は先月29日、「国民の皆様に大きな不便をおかけし、深くおわび申し上げる」と謝罪。「国民の不便を最小限に抑え、透明性ある情報共有と業務の連続性維持のために最善を尽くす」とした。
今回の事態を受けて、与野党は批判合戦を繰り広げている。野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表は先月29日、「絶対に起きてはならないずさんな管理体制が国民生活とサーバーセキュリティに大きな危機を招いた」と批判した。チェ・スジン院内首席報道官は「イ・ジェミョン(李在明)大統領は自らの責任を認め、尹行政安全部長官を直ちに更迭すべきだ」と求めた。国会科学技術情報放送通信委員会に所属する野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)代表は先月28日、自身のSNSに、「何よりも重要なのは本当の意味の地理的三重化だ」と指摘。「国家機関のサービスは設備の二重化を越え、地理的に完全に分離されたデータセンターに分散すべき」とし、今回、事故が起きた大田から離れた地域にも追加でデータセンターを構築すべきと主張した。さらに李氏は「華やかなAI時代を叫ぶ前に、まず強固な基礎インフラを構築することが先だ」とした。
一方、与党「共に民主党」のチョン・ヒョンヒ首席最高委員は同日、「現在の事態の本質は火災などに備えたシステムの二重化の欠如にある」とした上で、「今回の事態の原因はユン・ソギョル(尹錫悦)前政権の明白な職務放棄だ」とし、前政権時の2023年に大規模な電算ネットワーク障害が発生した後の対策が不十分だったと指摘した。
こうした与野党の批判合戦に、中央日報は先月30日付の社説で「政界が『責任の押し付け合い』を繰り広げている」と指摘。「国家的災害が起こる度に繰り返されるこのような姿は見苦しく、もはや驚きもしない。事態の収拾は後回しにして政争に没頭する姿は、国民をうんざりさせている」と批判した。その上で、「今回の国家電算ネットワークのまひ状態の責任がどこにあるかは当然明らかにすべきだが、今は事態の収拾が最優先だ。何より、国民の不便と不安は尋常ではない」と指摘した。
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