<W解説>ノーベル・ウィーク前が「憂鬱」から「期待」に変わるのはいつ?=ことしも韓国人の受賞者はなし
<W解説>ノーベル・ウィーク前が「憂鬱」から「期待」に変わるのはいつ?=ことしも韓国人の受賞者はなし
今月6日、京都大学名誉教授で、大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授の坂口志文氏のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった。8日には京都大学理事・副学長で、高等研究院特別教授の北川進氏が、ノーベル化学賞を受賞した。日本人のノーベル賞受賞者は、米国国籍を取得した研究者も含めると30人、1団体となった。一方、韓国はこれまでに平和賞1人、文学賞1人の受賞者を出しているが、科学分野での受賞はまだない。そのため、ノーベル賞の各賞が発表される「ノーベル・ウィーク」は、韓国にとって様々な分野でライバル視する日本との科学技術分野での差を改めて痛感する、いささか憂鬱(ゆううつ)な1週間になっている印象だ。

「ノーベル・ウィーク」前の今月4日、韓国メディアのヘラルド経済は記事の中で「『25:0』、これが日本と韓国のノーベル科学賞受賞者の比較だ」とし、受賞者数の日本との格差を強調した。続いて同メディアはことし、ノーベル賞受賞の有力候補とされる韓国人科学者が「一人もいない」として「韓国からはことし、科学系のノーベル賞の受賞者は出ないものとみられる」と予想した。その上で、「韓国からはなぜノーベル賞が出ないのか」とし、「もちろん韓国の科学技術研究は1970年代から本格化したため、『業績を積み上げる期間が短い』という点を考慮しなければならない。これは日本や中国に比べ相対的に不利な点になり得るということだ。しかし、何よりも、短期的な成果に執着する韓国の後進的な研究環境が足を引っ張っているという反省の声もある」と指摘した。さらに、「科学の秀才たちが医学部に集中している現象も深刻だ」とし、昨今の韓国の大学進学における受験生の医学部偏重主義を指摘した。ノーベル賞に医学・生理学賞はあるものの、韓国では医学に比べ、科学や物理を専攻する学生が少なく、その分野の研究者が十分に育っていない。さらに、同メディアは「これは今に始まったことではないが、優秀な人材が理工系を避ける社会的雰囲気も大きな問題と指摘されている」と解説した。

ノーベル賞を長く研究してきた韓国のポハン(浦項)工業大学のイム・ギョンスン名誉教授は、以前、韓国紙の中央日報の取材に「世界中どこへ行ってもわれわれほどノーベル賞を渇望している国はない」と話した。それだけ韓国にとって科学分野のノーベル賞受賞者の輩出は悲願であることがうかがえる。

一方、韓国メディアは、日本はもとより、中国人の受賞動向にも注目した。中国ではこれまで生理・医学賞、文学賞、平和賞で計3人の受賞者(中国国籍保有者を含む)を輩出している。ノーベル賞受賞の「登竜門」とされる英調査会社クラリベイトの「引用栄誉賞」に、ことしは受賞者22人の中に、「単一原子触媒」の概念を初めて提案したジャン・タオ中国科学院(CAS)会員が含まれた。韓国メディアのイーデイリーは「中国本土の機関で働く研究者が初めて選ばれたのは、最近の中国の地位が高まっていることを示している」とするクラリベイトの分析を伝えた。ジャン氏のことしのノーベル賞受賞はなかったが、韓国人または韓国の機関所属の研究者に至っては、「引用栄誉賞」受賞者さえ、2021年にコリョ(高麗)大学の故・イ・ホワン教授が受賞したのが最後で、それ以降、出ていない。

ことしも残念ながら、韓国人のノーベル賞受賞はなかった。韓国では昨今、「ノーベル・ウィーク」前には韓国人の受賞への期待よりも落胆の度合いが増している印象だが、息の長い地道な研究のためには、国家による継続的な支援も欠かせない。イ・ジェミョン(李在明)政権は、来年度の研究開発予算を増やした。韓国政府はことし8月、2026年度の科学技術分野の研究開発予算を前年度比19.3%増の35兆3000億ウォン(約3兆7988億5500万円)とする案を発表した。研究開発予算をめぐっては、ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権で削減されたが、ことし6月に発足した李政権は、過去最大規模の予算を編成した。

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