福島第一原発では、2011年3月の原発事故直後から発生している汚染水を処理した後に残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水がタンクに保管されている。日本政府と東京電力は2023年8月、福島第1原発の廃炉作業に必要なスペースを確保するには敷地内に並ぶ処理水の保管タンクを減らす必要があるとして、処理水の放出を開始した。
放出をめぐり、韓国では当初、国民からも懸念の声が強かったが、当時のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は国際原子力機関(IAEA)の「国際的な安全基準に合致する」とした検証結果を尊重する立場を示し、韓国政府として最終的に放出を容認した。一方、自国海域や公海などで放射性物質の検査を実施してきた。
対して、放出時に野党だった「共に民主党」は処理水を「核汚染水」とし、放出は「最悪の環境破壊」などと激しく反発した。
しかし、これまで、韓国政府が実施した検査で、安全基準を上回る放射能が検出されたことはない。検査などに予算を投入したのは当時の尹政権だが、最大野党だった「共に民主党」が放出に過剰とも言うべき反発をしなければ、関連する予算は抑えられたとの批判が出ている。
前出の中央日報は「韓国の慢性病である怪談政治が莫大な血税消費を招いた」とした上で、放出時に「共に民主党」の代表だった李在明氏が大統領となった今、「李在明政権は2026年、福島関連の海洋水産部(部は省に相当)予算を前年比31%減の4983億ウォンに調整した。これは汚染水(処理水)放出前とほぼ同じ規模であり、現政権も放出後に特に問題がないことを認めたのと変わらない」と指摘した。
一方、韓国は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、13年9月から福島など8県産の水産物の輸入を禁止しており、現在も継続中だ。
読売新聞によると、李大統領は今年8月、同紙の単独インタビューに応じた際、この輸入規制について言及。同紙によると、韓国から日本を訪れた観光客が日本産食品を楽しんでいるとの指摘に対し、李氏は「日本の一部地域の水産物に対する韓国の消費者の信頼は別個の問題だ。韓国国民の日本産水産物に対する信頼の回復が先決だ」と述べ、輸入規制の早期撤廃は時期尚早との考えを示したという。
外交部(外務省に相当)のチョ・ヒョン長官(外相)も先月、外国メディア向けに記者会見した際、輸入規制について言及。懸念が解消されるまでは解除は難しいとの考えを示した。また、韓国は「包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)」への加入を検討しているが、CPTPPは日本が主導しており、加入には日本を含む参加国12カ国の同意が必要となる。日本産水産物の輸入規制撤廃が争点となる可能性があるが、チョ氏は「(輸入)制限措置の撤廃は加入の先制条件ではないと考える」とした。
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