ことし、創業60周年を迎えた農心は、ロッテで製菓事業に携わっていたシン・チュンホ(辛春浩、1930~2021年)氏が、インスタントラーメン事業を行うためにロッテから独立して設立した。創業当時の社名はロッテ工業。78年に農心に変更された。「辛ラーメン」を開発したのも辛氏だ。辛ラーメンは大ヒットし、今や、日本や米国など各国にも輸出されている。
農心のことしの売上高は前年比2.48%増の3兆5249億ウォン(約3735億5903万円)、営業利益は21.26%増の1977億ウォンになると予想されている。
主戦場は海外で、韓国食品ブームが起きている米国や、毎年20%の高成長を続ける日本、中国を中心に、主力の「辛ラーメン」の売り上げ拡大に努めている。最近は、欧州法人も設立した。
また、同社は先月、「辛ラーメン」の初のグローバルアンバサダーに、韓国の人気ガールズグループ「aespa(エスパ)」を起用すると発表した。韓国内のみならず、世界的に人気がある「aespa」をアンバサダーに起用することで、世界市場でのブランド認知度向上を図る。「aespa」は辛ラーメンの「Spicy Happiness In Noodles(辛い幸せ麺)」のブランドスローガンの下、キャンペーンを通じて辛ラーメンの味わい、アイデンティティー、文化的魅力を発信する。その第1弾として、先月19日からは、農心グローバル公式YouTubeで、ミュージックビデオ形式の新CMの公開を始めた。同社によると、CMで使用している楽曲は、英国のポップグループ「スパイス・ガールズ」が1997年に発売した代表曲「Spice Up Your Life」を「aespa」の魅力を引き出す形で再解釈したバージョンだという。同社は「CM内では、辛ラーメンならではの『Spicy Happiness』を世界中の消費者に届けるというメッセージを表現しています」としている。また、映像には辛ラーメンの英語名「SHIN」の文字をメンバーが指の動きで表現する「辛ラーメンダンス」も含まれている。
また、日本では、「辛ラーメン トゥーンバ」がこのほど、経済情報誌「日経トレンディ」が発表した「2025年ヒット商品ベスト30」に選ばれた。「辛ラーメン トゥーンバ」は、若者を中心に人気を集めた商品で、ピリ辛クリーム味と、もちもちの食感が好評だという。韓国の通信社、聯合ニュースの報道によると、日本では4月にセブンイレブンでカップ麺を先行発売。2週間で100万個が売れたという。9月からは袋麺も発売された。ファミリーマートやローソンでも販売が始まり、累計販売数は700万個を超えたという。
農心を追う韓国の食品メーカーが三養食品だ。農心の辛ラーメンにトップシェアを奪われているが、韓国で初めてインスタントラーメンを発売したのは三養食品だ。
63年に発売された「三養ラーメン」は、朝鮮戦争後の食糧難が続いていた韓国で、手軽に食べられる食品として創業者の故チョン・ジュンユン(全仲潤)氏が考案した。この製品が生まれた背景には、国民の窮乏を救いたいというチョン氏の思いに日本の明星食品の奥井清澄社長(当時)が共感し、明星食品が技術を無償で提供したというエピソードがある。
三養食品は2019年に日本法人を設立した。同社が2012年に発売した激辛インスタントラーメン「ブルダック炒め麺」はユーチューブで拡散し、世界で大ヒット。日本でも販売されている。
また、「ブルダック炒め麺」によって、外国人が韓国の辛いインスタントラーメンに挑戦する「ファイヤー・ヌードル・チャレンジ」が世界的に広まったほか、消費者が既存の製品をアレンジして、世の中にまだ存在しない製品を作る「モディシューマー(modify+consumer)」ブームを巻き起こした。
ことし6月には「ブルダック炒め麺」シリーズの3種類の製品が、「辛すぎる」としてデンマークでリコール(回収)の対象となり、このニュースが世界で報じられたことで「ブルダック炒め麺」に対する関心が一層高まることにもなった。
三養食品のことしの売上高は前年比37.37%増の2兆3737億ウォン、営業利益は55.16%増の5346億ウォンになる見通しだ。同社も海外市場の攻略に注力しており、東京のほか、米国のロサンゼルス、インドネシアのジャカルタなど海外に5法人を置いている。
ことしの韓国のラーメンの輸出額は10億2000万ドル(約1594億8600万円)を超え、過去最高となっている。イーデイリーは「業界では、両社が海外市場でのブランドパワー、マーケティング戦略でトップの座をめぐり激戦を繰り広げていると口をそろえる」と指摘。「新興勢力である三養食品の『ブルダック炒め麺』とこれまで長年にわたって韓国ラーメン界のトップに立ってきた農心の『辛ラーメン』のうち、どちらが優位に立つか関心が高まっている」と話す業界関係者の声を伝えた。
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