<W解説>韓国の尹前大統領に懲役5年の判決、韓国メディア「内乱断罪のはじまりだ」
<W解説>韓国の尹前大統領に懲役5年の判決、韓国メディア「内乱断罪のはじまりだ」
2024年12月に「非常戒厳」を宣言した韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が、非常戒厳をめぐる捜査を妨害したとして、特殊公務執行妨害などの罪に問われた裁判で、ソウル中央地裁は今月16日、尹被告に懲役5年(求刑懲役10年)を言い渡した。尹氏はこのほか、内乱首謀罪など計8件の刑事裁判を抱えているが、判決が言い渡されたのはこの日が初めて。韓国紙の朝鮮日報は「16日の判決で裁判所が尹前大統領の非常戒厳宣布の違憲・違法性を認めただけに、今後、関連の裁判にかなりの影響を及ぼすものとみられる」と伝えた。

尹被告が宣言した「非常戒厳」は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。

1987年の民主化以降初めてとなる「非常戒厳」の宣言を受け、当時、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹被告はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

しかし、その後も社会の混乱は続いた。非常戒厳を宣言した尹被告は、昨年4月、憲法裁判所の弾劾審判で罷免された。また、内乱首謀罪などで起訴され公判が続いている。

16日、ソウル中央地裁は、非常戒厳の宣言をめぐり、自身に対する捜査当局の捜査を妨害したなどとして特殊公務執行妨害などに問われた尹被告に対し、懲役5年を言い渡した。地裁は量刑の理由について「大統領としての強大な影響力を乱用し、警護チームの職員を事実上、私兵化した。反省の態度も全く見せず、厳重な処罰が必要」などと説明した。民主化以降、実刑判決を受けた大統領経験者は5人目。

韓国紙の東亜日報によると、尹被告はこの日、法廷で終始、無表情で正面を見つめていたといい、裁判長が判決を言い渡すと、尹氏は硬い表情で唇を強くかみしめたという。記事は「同日の判決公判は午後2時に始まり、裁判所が大半の罪について有罪と判断する過程で、尹氏の顔が紅潮する場面も見られた。時折、姿勢を正し、浅いため息をつくこともあった」と伝えた。

尹被告は判決後、報道陣に対し、「今回の判決は大統領の憲法上の権限行使と刑事責任の境界を過度に単純化した決定だ」と批判した。また、尹被告の弁護団は「この事件の被告人は個人としての尹錫悦である以前に国家元首だったが、その地位と責任、憲政秩序上の特殊性を全て排除して刑事責任を問う方式は法治も完成とはみなし難い」とした上で「地裁は事実について判断したというよりも、特別検察官の一方的な主張を全て受け入れた。証拠調査を通じて明らかになった部分を全て無視した判決であり、納得できない」として控訴する考えを明らかにした。

尹被告による非常戒厳の宣言当時、与党だった最大野党「国民の力」のパク・ソンフン首席報道官は16日、判決について「司法府の判断を尊重し、今後も公正で中立的な裁判を期待する」とのみコメントした。党としての声明は出さず、その理由についてパク氏は「尹前大統領は党を離れたため、発表すべき見解は特にないというのが党の立場だ」と説明した。今後も続く公判についても、声明を出す予定はないという。また、大統領府のイ・ギュヨン公報疎通首席秘書官は同日、「求刑と判決が法と原則によって進められていると考える」と述べた一方、量刑の妥当性については「司法の判断を尊重しなければならない」とし、「コメントは差し控える」と述べた。また、尹被告に関連するそのほかの公判について、引き続き注視していくとした。

非常戒厳をめぐる尹被告の一連の公判で、初の判決が有罪だったことに、韓国紙のハンギョレは16日掲載の社説で「内乱断罪のはじまりだ」とした。社説は、裁判所がこの日、「尹被告が憲法と戒厳法に真っ向から違反しただけでなく、誰よりも遵法の先頭に立つべき大統領として適法な公権力の行使に抵抗したことは、厳罰に処すべきだ」と宣告の理由を明らかにしたとした上で、「それに比べて懲役5年の刑は、国民の目線からすると、残念な結果だ」と論評した。その上で、「尹錫悦側は『法技術』で状況を免れようとする小細工ばかり繰り出している」とし、「尹被告に対する司法的断罪は始まったばかりだ。裁判所は残りの裁判で尹被告の罪責に合った厳重な処罰を下さなければならない」と主張した。

来月19日には、尹被告が死刑を求刑されている内乱首謀罪の1審判決が言い渡される予定。

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