<W解説>北朝鮮が憲法改正、全て削除された南北統一の概念
<W解説>北朝鮮が憲法改正、全て削除された南北統一の概念
北朝鮮が3月に改正した憲法で、韓国との統一に関する記述を削除し、韓国を「別の国」と見なす条項を加えるなどしていたことがわかった。北朝鮮の憲法ではこれまで、南北を統一の対象と規定してきたが、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記は「2国家論」を提唱。対韓国路線の転換を進めてきた。今回、憲法にもこれが反映された形で、韓国紙の東亜日報は今回の改正について「朝鮮半島全体を領土と規定する韓国憲法第3条と相反するだけでなく、境界をめぐる認識の違いもあるため、衝突につながりかねないとの懸念が出ている」と伝えた。

南北関係をめぐっては、ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権が日本や米国と連携して北朝鮮に圧力をかけ、非核化を迫る政策を推し進めて以降、対決ムードが鮮明になった。こうした中、2023年7月、金氏の妹のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長(現総務部長)が韓国について「大韓民国」と表現。北朝鮮の対韓国路線が転換したのではと注目が集まった。それまで北朝鮮では公式文書やメディア報道で、韓国のことを「南朝鮮」と表現してきた。この変化に、韓国メディアは当時、「北朝鮮が韓国を『別の国家』とする立場を示している」などと分析した。

同年12月末、金総書記は朝鮮労働党中央委員会総会で、韓国との関係について言及し、「南北関係はもはや同族関係ではなく、敵対的な二つの国家関係、戦争中の二つの交戦国関係に完全に固着した」と述べ、「敵対的2国家論」を打ち出した。

その後、金氏は24年1月の最高人民会議(国会に相当)で、「今日、80年間の北南関係史に終止符を打つ」と宣言。「憲法上の『自主、平和統一、民族大団結』という表現が削除されなければならない」と述べ、韓国について「第1の敵対国、不変の主敵」と憲法に明記する必要性を強調した。

今年3月の最高人民会議では憲法改正が議題になった。そのため、韓国を「敵対国」と規定した対韓対策に沿う形で憲法の条文が修正されるのではないかとみられていたが、この部分の取り扱いがどうだったのかは当時、明らかにならなかった。

だが今月6日、韓国統一部(部は省に相当)はメディア向けの懇談会で北朝鮮の新憲法を公開した。改正された憲法では、旧憲法(23年9月改正)の序文や本文にあった「祖国統一」など、南北統一の概念が全て削除された。旧憲法では「社会主義の安全な勝利を成し遂げ、自主、平和統一、民族大団結の原則で祖国統一を実現するために闘争する」と明記されていた。

また、新憲法には領土条項が新設され、第2条には「朝鮮民主主義人民共和国の領域は、北側で中華人民共和国、ロシア連邦、南側で大韓民国と接する領土と、それに基づいて設定された領海及び領空を含む」と明記。韓国は領域外の別の国であるとの認識を鮮明にしている。しかし、南側の陸上・海上の境界線についての具体的な説明はなかった。これについて、聯合ニュースによると、北朝鮮政治が専門のソウル大のイ・ジョンチョル教授は、海上境界線が具体的に示されれば韓国側が反発する可能性があるため、紛争を避ける狙いがあるとの見方を示した。

また、改正憲法では「キム・イルソン(金正恩総書記の祖父)・キム・ジョンイル(金総書記の父)憲法」との表現を削除。韓国紙の東亜日報は「金総書記の権限を強化するなど、金正恩唯一体制を一段と強固にしたと指摘されている」と伝えた。

韓国紙の中央日報は7日掲載の社説で「北朝鮮の新憲法は基本的に韓国の憲法および法律と相反する」と指摘した。その上で社説は、韓国政府・与党内から最近、北朝鮮の「敵対的な二つの国家論」を変用した「平和的な二つの国家論」を提起する声が出ていることに懸念を示し、「北朝鮮が2つの国家論を展開するからといってわれわれまでが憲法と国政目標を投げ出すことはできない」と訴えた。

一方、聯合ニュースによると、北朝鮮が「2国家論」を反映した憲法改正を行ったことについて、韓国大統領府の関係者は7日、「憲法改正の動向と関連した事項を総合的に検討していく」とし、「政府は総合的検討に基づき、朝鮮半島の平和共存政策を一貫して推進していく」と述べた。
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