<W解説>韓国・サムスン電子の労使、劇的な暫定合意=スト回避に安堵
<W解説>韓国・サムスン電子の労使、劇的な暫定合意=スト回避に安堵
韓国の半導体大手、サムスン電子の労組が要求していた成果給をめぐる労使交渉が今月20日、暫定合意に達した。労働組合側が21日から実施を予告していたストライキは保留され、労組は「2026年賃金協約の暫定合意案」の賛否を組合員に問う投票を22日から始めた。スト突入を1時間後に控える中での劇的な妥結。韓国メディアは「韓国政府の労働担当閣僚も直接仲裁に乗り出し、懸念されていた半導体生産への影響は、ひとまず回避される見通し」(公共放送KBS)、「グローバル半導体戦争のさなか、自らの首を絞める結果となりかねなかった工場稼働停止という最悪の破局を防いだことは、まさに不幸中の幸いだ」(東亜日報)などと伝えた。

人工知能(AI)ブームにより、サムスン電子は好業績を上げている。同社の今年第1四半期の営業利益は57兆2000億ウォン(約6兆1526億3200万円)となり、40兆ウォンだったコンセンサス(市場予想平均)を大幅に上回った。

こうした好況を受け、同社の半導体事業を担うデバイス・ソリューション(DS)部門を中心とした労組は、会社側に対し、成果給の上限撤廃や赤字部門の待遇改善などを求めた。労組は上限なしで営業利益の15%の成果給を制度化するよう要求したほか、半導体部門の成果給財源の70%をメモリー・非メモリー事業部の両方に共同配分されるよう求めた。

労組は21日からのストを予告し、会社側と交渉を続けた。半導体は韓国経済の柱となっており、ストが実施されれば、世界有数の半導体メーカーである同社の生産に支障が出ることは避けられず、国内では懸念が広がっていた。政府も危機感を募らせ、ストを30日間禁止できる「緊急調整権」の発動も辞さない考えも表明した。産業通商部(部は省に相当)のキム・ジョングァン(金正官)長官は14日、SNSに投稿し、「ストで工場が停止した場合、1日に最大1兆ウォン(約1100億円)ほどの生産支障が予想される」とし、「現在加工中のウェーハに支障が出れば、最大100兆ウォンの被害が発生する可能性があり、1700余りの協力企業の被害は想像もできない」と懸念を示した。イ・ジェミョン(李在明)大統領も20日の閣議で、「一部の労働組合が団体交渉を行い、自分たちの利益を貫徹するため努力するのはよいが、そこにも適正な線があるのではないか」と苦言を呈し、「企業には多くの利害関係者が関わっている。労働に対しては正当な対価が保障されなければならないが、債権者も債権を回収できなければならず、関連する企業も守らなければならない」と述べた。

労組が予告した21日午前0時のスト突入が迫る中、20日夜、労使交渉は暫定合意に達した。報道によると、労使は成果給の制度化に関し、有効期間を10年に設定し、成果インセンティブ(OPI)1.5%と半導体(DS)部門の特別経営成果給10.5%を合わせて12%を支給することなどで合意した。通信社の聯合ニュースは「メモリー事業部の社員には最大約6億ウォン(約6200万円)の成果給が支払われることになる」と伝えた。

労使交渉が暫定合意に達したことについて、サムスン電子の最大労組であるサムスングループ超企業労働組合サムスン電子支部のチェ・スンホ委員長は「今回の合意案は、超企業労組と共同闘争本部がこの6か月あまり、全力を尽くして闘ってきた成果だ」と述べた。サムスン電子側の交渉代表であるDS部門のヨ・ミョング人事チーム長は、「今回の暫定合意が、共生の労使文化をつくっていく出発点になることを願っている」と話した。

韓国メディアは劇的な暫定合意を速報、その後、詳報した。韓国紙のハンギョレは21日掲載の社説で、「労使が予告したストライキの期限が目前に迫り、国民の懸念が高まっていた中、土壇場で劇的な合意に至ったのは幸いなことだ。労使が互いに一歩譲歩し、政府が最後まで仲裁に尽力した結果だ」と評価した。一方、「AI産業への転換期を迎え、半導体産業の異例の好況による超過利益をいかに分配すべきかという問題は、社会全体が解決すべき課題となった」と指摘。「個々の企業内での利益配分にとどまらず、共同体の統合と未来への投資のための社会的共有策を公論化するきっかけにしなければならない」と主張した。

東亜日報は「サムスン電子のスト危機はかろうじて一息ついたが、産業界全般に垂れ込める暗雲はますます濃くなっている」とし、今回の事態をきっかけに「営業利益連動型」の成果給が慣行化しかねないと懸念した。その上で、「企業の長期競争力を優先しつつ、個人別成果に応じて報いる合理的で持続可能なシステムを議論すべきだ。無理な分配要求を放置すれば、国家経済力を損なう『亡国病』となりかねないことを肝に銘じる必要がある」と主張した。
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