一方、物価高やウォン安による負担が増すなど、国民が実感する暮らし向きの改善などの課題は残っている。外交に関しては、日本との間では前政権から続く良好的な日韓関係の維持に努めた。また、高市早苗首相と複数回にわたって首脳会談を行って信頼関係を構築し、首脳同士の相互往来「シャトル外交」の定着につなげた。一方、対北朝鮮政策では、関係改善に手を差し伸べるも、北朝鮮は南北関係を「敵対的な二つの国家」とする方針で一貫しており、8年近く完全に途絶えている南北関係を間に見える形で進展させることはできなかった。
李氏は、「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施された大統領選で当選を果たした。李氏は就任翌日、「非常戒厳」以降、社会の分断が進んだことを踏まえ、国民に対し、「小さな違いを越え、互いに認めて尊重し、国民が主人の国、国民が幸福な国、真の大韓民国に向かって共に進もう」と呼び掛けた。
就任初期は「非常戒厳」で揺らいだ国政の正常化にまい進した。当選翌日には与野党の代表らと昼食会を開き、政治力の結集を呼び掛けた。李氏は当時、「譲歩するところは譲歩し、妥協するところは妥協し、なるべく皆が同意する政策で国民がより良く暮らせるようになることを心から願う。敵対と戦争のような政治ではなく、互いに対話して認め合い、実質的に競争する政治になることを希望する」と述べた。
世論調査会社の「韓国ギャラップ」による最近の調査で、支持理由として「経済・民生」が24%で最も高かったことにも表れているように、李氏は人工知能(AI)と半導体を国家成長戦略の中核に据え、産業業構造の転換と資本市場の改革を強力に推進してきた。政権発足時は2500ポイント台だった韓国総合株価指数(KOSPI)は半導体のスーパーサイクルも重なり、今月1日には史上初の8800台を突破した。韓国の中央銀行、韓国銀行は最近、今年の実質経済成長率の見通しを2%から2.6%に引き上げた。一方、物価高やウォン安による負担が増している上、首都圏を中心に住宅価格や賃貸住宅の家賃などが再び上昇傾向を示している。2年目の李政権は国民が実感できる形での景気回復を実現できるかどうかが試される。
外交では、米国による関税圧力や中東危機などの対応に苦慮する中、国益を最優先する「実用外交」を掲げ、一定の成果を上げた。米国との関税交渉をまとめたほか、中国との関係を改善させた。日本との関係では、「シャトル外交」を展開するなど、前政権から続く良好な関係性の維持に努めてきた。先月19日、李氏は故郷の南東部・アンドン(安東)に高市首相を迎え、首脳会談を行った。イラン情勢を踏まえ、エネルギー安全保障分野の協力強化などで合意した。一方、対北朝鮮政策では「朝鮮半島の平和共存」の方針に基づき対話を模索したが、南北を「敵対的な2国家」と位置付ける北朝鮮が韓国との接触を拒否。目に見える進展はなかったが、李氏は今後も粘り強く対話再開を訴え続ける構えだ。
李氏は今月2日の閣議でこの1年間を振り返り、「内乱による政治・社会的な衝撃や経済の混乱、国際秩序の急速な変化という困難の中で任期が始まった」とし、「国民の支持と公職者の献身のおかげで危機を乗り越えた」と感謝した。その上で、「その結果、韓国の正常化と回復、さらには飛躍への足場も着実に築かれつつある」とし、「任期を始める時よりも。終える時により多くの国民の支持が得られる政府になるとの言葉を改めて心に刻み、常に最善を尽くす」と決意を示した。
任期2年目については「これまでの政策結果を土台に国民の生活の実質的な変化をより大きくし、よりスピードを上げ、その幅をさらに広げていかなければならない」と述べた。その上で李氏は具体的な政策として、「輸出など主要指標の改善成果を中小企業や小規模事業者、庶民、社会的弱者など国民全般に波及させることに注力すべきだ」とし、「AI革命とエネルギー転換を加速させる物的・制度的基盤を強固にし、半導体だけでなくロボット・防衛産業などその他の先端産業の育成にも拍車をかけ、『超格差経済強国』(圧倒的な競争力を持つ経済大国)の扉も大きく開かなければならない」と語った。
韓国ギャラップが先月22日に発表した李氏の支持率は64%で、就任1年次としては1987年の民主化以降の大統領でムン・ジェイン(文在寅)氏に次ぎ2番目に高かった。この1年、高支持率を維持してきた李氏だが、3日の統一地方選で首都・ソウル市の市長選に与党候補が敗北したことは李氏にとって打撃となったといえる。また、与党はさらに政権基盤を固めようと、与党側に有利な法案の可決などに踏み切ろうとしている。こうした法改正が続けば、今後の政権運営にマイナスの影響を与えかねない。国民が李氏に本格的な評価を下すのは、統一地方選を経たこれからとなりそうだ。
李氏は本日8日に就任1年の記者会見を開き、改めて今後の国政運営の方針を示す方針だ。
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