スターバックス・コリアは、光州事件から46周年にあたる先月18日、コーヒータンブラーの販促キャンペーン「タンク・デー」を行った。しかし、「タンク」との言葉が「戦車」による弾圧を連想させるとして批判が高まった。
1980年に起きた光州事件は、南西部の光州で武装した市民が軍と衝突し、多数の死傷者が出た民主化運動。軍は当時、タンク、つまり戦車を使って市民を弾圧した。光州市によると、10日間続いた市民らと軍の衝突による死者・行方不明者は240人以上に上る。ただ、正確な死者数など不明点も多い。
タンブラーの販促イベントは意図的に光州事件に結び付けようとしたものではなかったが、民主化運動を侮辱したと受け止められた。また、キャンペーンの告知に用いられた「机にドン!」との表現も、大規模な民主化運動のきっかけとなった1987年の大学生の拷問致死事件を連想させるとして非難を浴びた。この事件では大学生1人が警察による拷問の末に死亡したが、警察は当時、拷問の事実を隠すため、「机を『ドン』と叩いたら、(大学生が)『うっ』と言って死んだ」と説明した。
スターバックス・コリアはキャンペーン開始から数時間後にこれを中止する措置を取ったほか、同チェーンを運営する新世界グループはスターバックス・コリアのCEO(最高経営責任者)を解任した。しかし、世論の反発は収まらず、光州市やソウル市の店舗を中心に不買運動に発展した。政府からもキャンペーンを批判する声が相次ぎ、イ・ジェミョン(李在明)大統領はSNSで「市民の血が流れた闘争を冒涜(ぼうとく)している」と強く非難した。また、行政安全部(部は省に相当)のユン・ホジュン長官もSNSで「民主主義は多くの市民の犠牲と献身の上に築かれたものだ。その歴史を軽視したり、商業的な素材として消費したりする行為は決して見過ごすことができない」と批判。その上で、政府として今後、イベントなどで同社の商品を使用しない方針を明らかにした。行政安全部をはじめとする政府機関は、これまで国民参加型イベントなどで同社のコーヒー引換券などを景品として使用してきた。
世論の反発が収まらぬ中、スターバックス・コリアを傘下に持つ新世界グループのチョン・ヨンジン会長が先月26日、記者会見を開いた。チョン氏は「不適切なマーケティングにより、多くの方が深い痛みと怒りを感じているという事実を非常に重く受け止めている」とし、「いかなる弁明もしない。今回の件に関する全責任は私にある。私の過ちだ」と謝罪した。
今月22日には、2000店舗以上ある全店舗で営業を午後3時で終了し、再発防止策の一環として全従業員を対象に研修を行った。報道によると、店員らは店舗ごとに、歴史認識などに関する大学教授の講義映像を視聴。1950年代以降に起きた韓国の近現代史の出来事を振り返りつつ、それをどのように正しく認識すべきかについて学んだという。スターバックス・コリア本社の社員は既に17日に社内研修を行った。新世界グループのチョン会長らは本日24日に別途研修を受ける予定。
新世界グループは研修について「今回のマーケティング問題を重大に受け止め、再発防止に努める意思を示すものだ」と説明しているが、全店舗、全従業員を対象とした研修には様々な声が聞かれる。韓国紙の中央日報によると、セジョン(世宗)大学経営学科のキム・テジョン教授は「徹底した従業員教育と再発防止への意思を示せば、企業イメージの改善にもつながるだろう」と評価した。一方、ネット上では、「単なるパフォーマンス」「一部社員の過ちを、なぜ全従業員が背負わなければならないのか」などと冷ややかな声も上がっている。
今回の対応が消費者の信頼回復につながるのか、注目される。
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