<W解説>朝鮮戦争勃発から76年の日、対照的だった南北の国家元首
<W解説>朝鮮戦争勃発から76年の日、対照的だった南北の国家元首
朝鮮戦争の開戦から今月25日、76年となった。韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は記念式典で「戦争が起きる心配も戦う必要もない真の平和の朝鮮半島を必ず実現する」などと述べた中、2000字分量の演説の中で北朝鮮や核問題には触れなかった。このことを指摘した韓国紙の東亜日報は「北朝鮮との対話、意思疎通への意志を維持したものとみられる」と解説した。一方、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記はこの日、韓国の主要施設への打撃を目的とする新型放射砲(多連装ロケット砲)やミサイルなどの兵器試験を視察した。

朝鮮戦争は朝鮮民族の分断国家として1948年に成立した韓国と北朝鮮の間で生じた、朝鮮半島の主権をめぐる国際紛争。韓国では「6・25戦争」と呼ぶ。1950年6月、北朝鮮が武力による国家の統一を目指して韓国に攻め入ったことから始まった。国際連合は、北朝鮮への制裁を決定し、米軍を主力とする国連軍を派遣。これに対し中国は、中国人民義勇軍を送って北朝鮮を支援した。一進一退の戦いは1953年に休戦協定が結ばれるまで続いた。休戦協定は、1953年7月27日に国連軍と北朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者間で締結された。韓国は休戦に反対し、署名を拒否したが、この協定により北緯38度線付近に軍事境界線が設定され、境界線から南北それぞれ約2キロは非武装地帯(DMZ)とされた。

今月25日、朝鮮戦争の勃発から76年となり、ソウル近郊のスウォン(水原)で記念式典が開かれた。式典には朝鮮戦争参戦有功者をはじめ、政府・軍の関係者ら約1000人が出席した。李大統領は「われわれが享受している平和と繁栄は、ただで得られたものではない。祖国の命運が崖っぷちに立たされた時、自身の全てを捧げて戦場を駆けめぐった英雄たちの崇高な犠牲と献身によって築き上げられたものだ」と述べ、戦死者をたたえた。その上で李氏は、「強力な国防力で国民と領土を守り、戦争の心配も戦う必要もない平和な朝鮮半島を必ずつくっていく」と強調した。

李氏のこの演説について、韓国紙の朝鮮日報は26日付けの社説で「『北(朝鮮)』という単語は一度も登場しなかった」とし、「いや、わざと避けたと言った方が正しいだろう」と指摘した。

韓国の対北朝鮮政策をめぐり、昨年6月に発足した李政権は「敵対と対決」の南北関係を「平和共存と共同成長」へと転換することを目指し、「朝鮮半島平和共存政策」を推進。李氏は北朝鮮の体制を尊重し、吸収統一を追及せず、一切の敵対行為を行わないとする「3原則」を表明している。一方、北朝鮮は韓国を「最も敵対的な国家」と位置づけ、対話を拒否している。

前出の社説は、今月6日の顕忠日(戦没者追悼の日)の追悼式での演説など、李氏が北朝鮮に関する言及を回避するのは今回が初めてではないと指摘。対北融和政策を進めたムン・ジェイン(文在寅)政権(2017年5月~22年5月)よりも「金総書記の顔色をうかがっているような雰囲気がある」とした。北朝鮮に対話を求める努力を続けている中、刺激することを避ける意図があるとみられるが、北朝鮮は、朝鮮戦争勃発から76年を迎えた25日、人民に向け米韓への敵対心を鼓舞した。朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は同日付の社説で「今日、我々が対峙している敵は、1950年代にこの地に黒い雲をもたらし、永遠に癒えない傷を残した米帝と階級的敵の後裔(こうえい)だ。新世代が階級闘争のバトンを堅く引き継ぐ問題は、祖国の運命、革命の前途と直結する重大な問題だ」と強調した。その上で、「この地に76年前の6・25が二度と再現されないようにするには、侵略的な相手を圧倒できる強い力を持たなければならない。これこそ6・25が刻む哲理だ」とした。

また、同日、金総書記は240ミリ径の多連装ロケット砲などの「重要兵器試験」を視察したと報じられた。韓国を射程に入れた打撃能力の向上を狙った試験とみられる。専門家は、朝鮮戦争の開戦日にあたるこの日に韓国を射程圏とした兵器を公開することで、韓国側に不安を与える狙いがあるとの見方を示している。

李氏が記念式典で述べた「戦争が起きる心配も戦う必要もない真の平和の朝鮮半島」の実現はいつになるのか。
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