<W解説>韓国、与党が大統領の「任期4年・再選可」を推進=実現しても現職・李氏の2期目はない理由
<W解説>韓国、与党が大統領の「任期4年・再選可」を推進=実現しても現職・李氏の2期目はない理由
韓国の与党「共に民主党」が大統領の任期を5年から4年に短縮し、再選を可能とすることなどを盛り込んだ憲法改正を目指す中、先月に国会議長に就任した同党のチョ・ジョンシク議員の発言が波紋を広げている。憲法128条第2項は「大統領の任期延長または再任に関する規定を変更するための憲法改正は、その憲法改正の提案時に在任中の大統領には効力を有しない」と定めている。このため、同党は現職大統領のイ・ジェミョン(李在明)氏の再任は改憲議論の対象外との立場だが、チョ氏は今月28日の記者懇談会で「世論と国民の選択の問題だ」と発言。野党からは李氏の再選を念頭に置いたものだとの批判が噴出した。

現行の憲法上、韓国大統領の任期は5年で再選はない。長年の軍事独裁の経験を踏まえ、1987年の改憲時に「5年・1期制」が規定された。しかし、5年1期では任期後半にレームダック(死に体)状態になりがちで、一貫性と連続性ある政治が実現できないとの指摘が以前からある。このため、歴代政権では2007年1月、当時のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領が「4年・2期制」を提案する特別談話を発表した。当時の世論調査では、賛成が反対を上回ったが、盧政権下での憲法改正には反対が6割を占めた。2016年10月には、当時のパク・クネ(朴槿恵)大統領が現行憲法について「体に合わない服になった」と述べ、改正に向けて検討を始める考えを示した。政府内に組織を設け、任期中に改憲案をまとめる方針を示したが、朴氏は友人に機密資料を提供するなどして国政への不当介入を許した事件で弾劾訴追され、任期途中の2017年3月に大統領を罷免された。混乱の中、改憲議論もとん挫した。ムン・ジェイン(文在寅)政権でも2018年、大統領の任期を4年とし、1回に限り再任が可能とする「連任制」を盛り込んだ憲法改正案が打ち出されたが、実現しなかった。

憲法改正には国会議員の3分の2以上の賛成と国民投票での過半数の賛成が必要でハードルが高いが、現与党「共に民主党」はこれを実現しようとしている。李大統領も昨年6月の大統領選の際、大統領の任期を5年から4年に短縮した上で再選を可能にする制度改革などを柱とした憲法改正構想を発表している。

一方、前述のように憲法128条第2項により、改憲時の現職大統領の再選は認められないが、野党は「共に民主党」がこの条項も改正して李政権の延命を図ろうとしているのではないかと疑念を抱いている。「共に民主党」はこれを明確に否定しているが、前出のチョ議長の発言により、疑念が強まることとなった。チョ氏は28日の記者懇談会で、現職大統領の再選制について言及。「権力構造の改編において、現職大統領の再選を可能にする憲法改正の問題は、最終的には主権者である国民の選択だ」とし、「憲法改正諮問委員会や憲法改正特別委員会を通じて意見が集約されるのではないか」との見方を示した。この発言に、「任期4年・再選制」が現職の李大統領にも適用されるのではないかとの受け止めが広がった。

最大野党「国民の力」はチョ氏の発言に反発した。同党のチョン・ジョムシク院内代表は「国会議長ともあろう人物が、なぜこのような発言をするのか」と疑問を呈し、「現職大統領の再任は現行憲法上禁止されており、改憲の議論の対象になり得ない。これを議論の対象とするならば、改憲の議論そのものが不可能になる」と指摘した。その上で、「チョ議長は李大統領の再任に向け、先頭に立つつもりなのか。『国民の力』は、李大統領の再任構想が含まれる改憲議論には一切応じない」と強調。「不要な対立の拡大を防ぐため、李大統領自らが再任はないと明言してほしい。こうしたことを言わざるを得ない状況自体、甚だ遺憾だ」と不快感を示した。

批判を受け、チョ氏は29日、火消しに乗り出した。同日、SNSに「現職大統領の再任は改憲議論の対象ではない」と強調。前出した28日の自身の発言について「権力構造の改編を含め、改憲がなされるためには政治主体間の合意と国民の選択があってこそ可能だとの趣旨の話をした」とし、「誤解と議論を招くことになり、遺憾だ」と釈明した。

大統領府もホン・イクピョ政務首席が同日、民放のラジオ番組で「李大統領もこれまで数回にわたり、現行憲法上、それ(現職大統領の再任)は不可能だと述べている」とし、「私の頭の中で『再任改憲』というのは一度も考えたこともなく、可能だと考えたこともない」と述べた。来月行われる与党「共に民主党」の代表選に立候補しているソン・ヨンギル議員は民放の番組でチョ氏の発言について「不適切な発言だ、謝らないと」と述べた。同じく候補者のチョン・チョンレ議員とキム・ミンソク議員もそれぞれ「記者団に誘導されたようだが、(チョ氏は)『憲法128条上、不可能なことです』とはっきり言えばよかった」「現職大統領の再任改憲は非現実的だ」と述べた。

前述のように、これまで韓国では改憲論が浮上しては先送りとなってきた。果たして、李政権で実現するのか。野党「改革新党」の政策研究機関「改革研究院」が今月29日に発表した社会懸案調査によると、大統領の任期を「5年・1期制」から「4年・2期制」へ変更する憲法改正について「反対」が55.2%で、「賛成」(42.5%)を上回った。また、来年から本格的に憲法改正の議論を推進する見通しであることについても反対(52.9%)が賛成(43.3%)を上回る結果となっている。
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