<W解説>韓国大統領選の最有力候補に「司法リスク」再燃=選挙戦への影響は?
<W解説>韓国大統領選の最有力候補に「司法リスク」再燃=選挙戦への影響は?
韓国の大法院(最高裁判所)は今月1日、公職選挙法違反罪に問われた最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)前代表に無罪を言い渡した二審判決について、一部有罪と判断し、ソウル高裁に差し戻した。李氏は6月3日に行われる大統領選挙の同党公認候補。各世論調査では、次期大統領にふさわしい人物として支持率トップを独走している。李氏は高裁で決める量刑の内容によっては被選挙権の停止となり、出馬できなくなるが、6日3日の大統領選までに判決が確定する可能性は低く、立候補の妨げにはならない見通しだ。しかし、韓国紙のハンギョレは「大統領選の本選に出馬することが既に決まっている李候補の司法リスクが再び浮き彫りになった」と伝えた。

李氏をめぐっては、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に関連し、前回大統領選の候補者だった2021年に虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反罪に問われ、昨年11月の一審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。しかし、この判決に、李氏側と検察の双方が控訴し、ソウル高裁は今年3月、逆転無罪を言い渡した。検察側の上告後、大法院はこの事件を裁判官全員で審理する「全員合議体」を構成し、審理を開始した。大法院は李氏の発言の一部について「虚偽事実の公表」にあたると判断。二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻した。

李氏は6月3日投開票の大統領選の「共に民主党」公認候補。各世論調査の結果から、最も次期大統領に近い人物だ。今月1日に発表された、韓国の世論調査会社4社が合同で行った最新の世論調査の結果でも、次期大統領にふさわしい人物として42%でトップとなり、2位のハン・ドクス首相(13%)ら、他者を大きく引き離している。

大法院による無罪破棄は、李氏の選挙戦にどれほどの影響を与えることになるのか。韓国の法律は、上級審の判断が下級審の判断を拘束すると定めている。このため、高裁は今後、李氏に有罪判決を出す見通しだ。高裁で決める量刑によっては被選挙権の停止となるが、6月3日投開票の大統領選前に刑が確定する可能性は低く、出馬自体に影響はないとみられる。ただ、通信社の聯合ニュースは「大法院が有罪の判断を示したため、李氏には打撃となるとみられる」と伝えた。李氏に「司法リスク」が再燃したため、中道層離れを招く恐れがあるからだ。

今回の大法院の判断について、李氏は1日、記者団に対し、「私の考えとは全く異なる方向の判決だ」とした上で、「政治は結局国民が行うものだ。国民の意向に従うべきだ」と述べた。「共に民主党」は大法院を強く非難。同党のチョ・シンレ首席報道官は会見で「大法院の判決は明白な政治批判であり、拙速な裁判だ。大法院の不当な大統領選介入を強力に糾弾する」と述べた。

一方、与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長は1日、「二審での非常識な免罪符にブレークをかけ、有権者の判断を歪曲(わいきょく)した発言を撤回した大法院の判決は極めて常識的な判決だ」と評価。その上で「今、ボールは『共に民主党』と李在明候補に戻った。選挙は信頼の上で行わなければならない。虚偽事実の公表で、国民の判断を歪曲したと大法院が判断した。これ自体で、大統領候補の資格は既に喪失した」とし、「共に民主党」に対し、大統領選の公認候補を李氏から別の候補に交代すべきと主張した。クォン氏は「政治が答える番だ。これほどの判決が下されたにも関わらず、(李氏を)大統領選候補とすることに固執するなら、それ自体、国民に対する重大な侮辱だ。候補の自主的な辞退が常識だ」とした。

一方、前出の「共に民主党」の首席報道官は、「公認候補交代の可能性はあるか」との記者からの問いに、「ない」と明確に否定した。
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