李氏をめぐっては、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に関連し、前回大統領選の候補者だった2021年に虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反罪に問われ、昨年11月の一審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。しかし、この判決に、李氏側と検察の双方が控訴し、ソウル高裁は今年3月、逆転無罪を言い渡した。検察側の上告後、大法院はこの事件を裁判官全員で審理する「全員合議体」を構成し、審理を開始した。大法院は李氏の発言の一部について「虚偽事実の公表」にあたると判断。二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻した。
李氏は6月3日投開票の大統領選の「共に民主党」公認候補。各世論調査の結果から、最も次期大統領に近い人物だ。今月1日に発表された、韓国の世論調査会社4社が合同で行った最新の世論調査の結果でも、次期大統領にふさわしい人物として42%でトップとなり、2位のハン・ドクス首相(13%)ら、他者を大きく引き離している。
大法院による無罪破棄は、李氏の選挙戦にどれほどの影響を与えることになるのか。韓国の法律は、上級審の判断が下級審の判断を拘束すると定めている。このため、高裁は今後、李氏に有罪判決を出す見通しだ。高裁で決める量刑によっては被選挙権の停止となるが、6月3日投開票の大統領選前に刑が確定する可能性は低く、出馬自体に影響はないとみられる。ただ、通信社の聯合ニュースは「大法院が有罪の判断を示したため、李氏には打撃となるとみられる」と伝えた。李氏に「司法リスク」が再燃したため、中道層離れを招く恐れがあるからだ。
今回の大法院の判断について、李氏は1日、記者団に対し、「私の考えとは全く異なる方向の判決だ」とした上で、「政治は結局国民が行うものだ。国民の意向に従うべきだ」と述べた。「共に民主党」は大法院を強く非難。同党のチョ・シンレ首席報道官は会見で「大法院の判決は明白な政治批判であり、拙速な裁判だ。大法院の不当な大統領選介入を強力に糾弾する」と述べた。
一方、与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長は1日、「二審での非常識な免罪符にブレークをかけ、有権者の判断を歪曲(わいきょく)した発言を撤回した大法院の判決は極めて常識的な判決だ」と評価。その上で「今、ボールは『共に民主党』と李在明候補に戻った。選挙は信頼の上で行わなければならない。虚偽事実の公表で、国民の判断を歪曲したと大法院が判断した。これ自体で、大統領候補の資格は既に喪失した」とし、「共に民主党」に対し、大統領選の公認候補を李氏から別の候補に交代すべきと主張した。クォン氏は「政治が答える番だ。これほどの判決が下されたにも関わらず、(李氏を)大統領選候補とすることに固執するなら、それ自体、国民に対する重大な侮辱だ。候補の自主的な辞退が常識だ」とした。
一方、前出の「共に民主党」の首席報道官は、「公認候補交代の可能性はあるか」との記者からの問いに、「ない」と明確に否定した。
Copyright(C) wowneta.jp