李氏は6月の大統領就任後、初めて来日。首脳の相互往来「シャトル外交」の第1弾と位置付けられた。日韓シャトル外交とは、日本の首相と韓国の大統領が相互に訪問し、両国間の課題を話し合おうというもの。両国の関係悪化で長らく途絶えていたが、日本との関係改善を図ったユン・ソギョル(尹錫悦)前政権時の2023年5月、12年ぶりに再開した。今年6月に大統領に就任した李氏も、大統領選に当選した際、できる限り早く日本を訪れたいとの意向を示していた。
会談は約2時間行われた。初めに同席者を限定した少人数の会議を行い、その後、拡大会合を実施した。冒頭、石破氏は「非常に厳しい戦略環境の下、最初に日本を訪問していただき、大変心強い」と述べた。これに対し、李氏は「それほど韓日関係を重要視しているとご理解いただければ」と応じた。
会談で両首脳は1965年の日韓国交正常化からこれまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を安定的に大きく発展させていくことで一致した。また、北朝鮮の核・ミサイル開発の抑止に連携して取り組む方針を確認したほか、経済や文化交流、少子高齢化への対策など幅広い分野で関係強化を図っていくことを申し合わせた。人的交流のさらなる拡大に向け、ワーキングホリデーの制度を拡充することも合意した。
両首脳は会談後、17年ぶりに首脳会談の成果を文書で発表した。文書では、国際社会の様々な課題に対し、両国が共に協力していくことを確認したとしている。また、65年の国交正常化以降これまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致したと明記した。
今回の李氏の訪日に同行したウィ国家安保室長は24日、「首脳間の個人的信頼関係が強化された」と成果を強調した。一方、元慰安婦・徴用工支援団体などからは、今回の会談で歴史問題について進展がなく、日本に譲歩し過ぎたなどとして、批判の声が上がっている。この点について、李氏は24日、大統領専用機内で開いた記者会見で、「そのような指摘を受ける覚悟もした」とした上で、「歴史問題でも若干の進展はあった」と反論。「理解が深まってこそ歴史問題でより前向きな措置ができると思う。少し時間をもらえれば歴史問題や領土問題で目に見える成果が出せる」と述べた。今回の会談で、石破氏は李氏に対し、「(植民地支配への反省とおわびを盛り込んだ)1998年の日韓共同宣言を含め、歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」と伝えた。これに対し、李氏は「難しい問題は難しい問題として扱い、一方で協力できる分野では協力する」と述べた。
友好ムードが演出された今回の会談。一役買ったのは石破氏の「おもてなし」だった。会談が終わり、その日の夜には夕食会が開かれ、カレー好きとして知られる石破氏が考案した「石破式カレー」が提供された。そのほか、キムチを乗せた韓国式のウナギ料理や、桃が李氏の好物であることにちなみ、岡山県産の白桃などが並んだ。韓国大統領室のカン・ユジョン報道官によると、夕食会では「大学時代を通してカレーを好んで食べていた」という石破氏の話に、李氏は「当時、日本の人気ガールズグループ『キャンディーズ』の歌を聴きながらカレーを食べていた青年・石破首相の姿が目に浮かぶ」と述べ、場を和ませたという。石破氏は「キャンディーズ」のファンであることでも知られる。カン報道官によると、夕食会後には両首脳夫妻が通訳のみを伴い、約30分にわたり歓談したという。
また、李氏の訪日には妻のキム・ヘギョン(金恵景)氏(58)も同行した。金氏は23日夕、石破首相の佳子夫人と交流した。両夫人は日本の水引、韓国の「メドゥブ(韓国語で結び目の意)」の「結び」に関連した日韓の伝統工芸の飾りづくりを体験した。体験を終えた2人は作品を交換。日韓の強い結びつきを願い、次回は、韓国で会おうと約束したという。
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