<W解説>韓国で繰り返される反中デモ=国益損なう事態に、大統領は対応を指示
<W解説>韓国で繰り返される反中デモ=国益損なう事態に、大統領は対応を指示
韓国・ソウルで最近、保守系団体などが反中デモを続けている。中国は今月1~8日まで国慶節(建国記念日)の大型連休で、これを利用して多くの中国人が韓国を訪れている。こうした中、3日にもソウル中心部でデモが行われた。駐韓中国大使館は、韓国に滞在中の自国民に対し、身の安全に留意するよう注意を呼びかけた上で、デモの主催団体が国慶節に合わせてデモを計画したとして「意図が不純で、民意は決して得ることはできない」と非難した。韓国政府は先月29日から、中国本土の3人以上の観光客グループは15日間、ビザ(査証)なしで滞在できるプログラムを開始。中国人観光客がこれまでより100万人以上増えるとの期待も高まる中で繰り広げられている反中デモに、事態を重く見たイ・ジェミョン(李在明)大統領は今月2日、関係省庁に、対策を講じるよう指示した。

韓国ではユン・ソギョル(尹錫悦)前政権時、当時与党の保守系「国民の力」が大敗した昨年4月の総選挙に中国が介入したとの言説が保守層を中心に広まっており、尹氏の支持者らが中心となって反中デモを繰り広げている。

中韓関係は、尹前大統領が日本や米国との連携強化を外交政策の軸に置いたことに中国側が不満を強め、冷え込みが続いてきたが、先月、韓国のチョ・ヒョン外相と、中国の王毅外相が中国の北京で会談。両外相は戦略的パートナーシップを深化させていくことで一致した。また、今月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、李大統領と中国の習近平国家主席がソウルで首脳会談を行う可能性も高まっている。実現すれば約11年ぶりとなる会談が関係改善のきっかけとなるか注目されている。

北京で外相会談が行われた先月17日、韓国・ソウルでは極右団体が反中集会を開いた。警察の非公式の推計で約50人が集結。中国人に対する蔑称を叫びながら、「中国人の投票権反対」「華僑特恵=自国民逆差別」などと書かれたプラカードを持ってデモ行進した。

こうしたデモは観光産業にも悪影響を与えており、ソウルの中でも外国人観光客が多く訪れるミョンドン(明洞)では、明洞観光特区協議会が先月、警察に対し、嫌中・反中デモの禁止を要請した。協議会は「デモ隊が特定国の観光客を狙った暴言やプラカードを掲げ、観光客に恐怖を与えている。韓国のイメージと国益を損なっている」と懸念を示した。

韓国は先月29日、中国人の団体観光客を対象にビザ(査証)なしで入国できる試行プログラムを開始。来年6月まで、中国本土の3人以上の観光客グループは15日間、ビザなしで滞在できる。

中国は今月1~8日まで国慶節の大型連休で、ノービザ政策が始まったこともあり、中国からの訪韓旅行客増に期待が高まっているが、駐韓中国大使館は2日に声明を発表。反中デモが繰り返されていることを受け、「韓国側に、在韓の中国国民の身辺の安全と合法的権益を徹底して保障するよう厳正に要請する」とした。大使館の報道官は、韓国を訪れた中国人に対する韓国国民の親切なもてなしに感謝した一方、「同時に我々(駐韓中国大使館)は、残念ながら韓国の個別の政治家が虚偽情報をまき散らしており、一部の極右団体が中国観光客の集まるソウル・明洞、テリムドン(大林洞)などで反中デモをたびたび繰り広げていることを注視している」と懸念を示した。その上で、「中韓はいずれもこうした行動にははっきりと反対する。我々は、中韓両国の各界の共同の努力によって中韓の戦略的パートナーシップは必ず肯定的に発展していくはずであり、少数の政治勢力の企図は決して成功しないと確信する」と述べた。

事態を重く見た李大統領は2日、首席補佐官会議で反中デモについて「文化的でなく、低レベルで、同時に国家の品格を下げるこうした行為は決して放置すべきではない」とし、関係省庁に対し、外国人観光客の安全を脅かす扇動行為を徹底的に取り締まるとともに、ヘイトスピーチ(憎悪表現)を撲滅するための対策を講じるよう指示した。

また、与党「共に民主党」のキム・テニョン議員は同日、ヘイト・扇動集会を禁止する内容の「集会・デモに関する法律」の改正案を代表発議した。韓国紙の朝鮮日報によると、同改正案は条項を新設し、特定の人種や特定国の出身者らの対する差別・ヘイト集会の主催を禁止し、他人の人格権を深刻に侵害する侮辱を集会制限通告の対象に追加するものだという。同紙によると、キム氏は、国内で続いている反中デモについて、「憲法上の表現の自由の範囲を逸脱した集会だ」と懸念を示した。

こうした中、3日にもソウル中心部でデモがあった。参加者の一部は「チャイナ アウト」などと書かれたプラカードを掲げた。

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