<W解説>日中韓首脳会談は今度こそ開催されるのか?5月に実現すれば約4年半ぶり
<W解説>日中韓首脳会談は今度こそ開催されるのか?5月に実現すれば約4年半ぶり
日中韓首脳会談を今年5月に開催する方向で調整が進められていることがわかった。実現すれば、2019年12月以来、約4年半ぶりとなる。会談をめぐっては日中韓の外相が昨年11月、「早期の適切な時期」に開催することで一致していた。

日中韓首脳会談は1999年に当時の小渕恵三首相の提唱により、フィリピンでの国際会議に合わせて初めて開催された。2008年からは3か国の持ち回り開催となった。これまで、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応や、経済協力などを話し合ってきた。

2019年は12月に中国の四川省・成都で開かれ、北朝鮮への対応で緊密に連携していくことで一致。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓自由貿易協定(FTA)など自由貿易を推進していくことも確認した。

しかし、翌2020年は日韓関係の悪化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大も影響して見送られた。その後2021年、2022年、そして昨年も開催されることはなかった。

昨年3月、岸田文雄首相は、来日した韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領との共同記者会見で「ハイレベルの日韓中プロセスを早期に再起動する重要性で一致した」と述べ、日中韓首脳会談の再開に意欲を示した。

昨年11月、2019年8月以来、4年3か月ぶりに開かれた日中韓外相会談で、議長国を務めた韓国のパク・チン(朴振)外相(当時)は、3か国首脳会談の早期開催に向けて努力することを望んでいると口火を切った。これに、上川陽子外相は開催に前向きな発言をしたが、中国の王毅外相は直接言及しなかったとされる。ただ、3か国外相は「なるべく早期で適切な時期」に開催するため、作業を加速化することでは一致した。

中国は当初、米国との対立激化を受け、日韓に接近しようとしていたが、昨年11月に対面による米中首脳会談が開かれるなど、米国との対話ムードが広がると、日韓との会談に消極的な姿勢に転じた。それでも議長国の韓国は、昨年中や今年4月の実施を模索したが、調整が難航し、実現せず現在に至る。

しかし、日韓の主要メディアが今月5日までに報じたところによると、日中韓首脳会談を5月下旬にソウルで開催する方向で議長国の韓国政府が調整を進めているという。韓国の公共放送、KBSによると、韓国大統領室の関係者は同局の取材に「具体的な日付は決まっていない」としつつも、開催に向けて調整中であることは認めた。開催されれば、岸田首相、尹大統領、そして中国の李強首相が出席する見通し。

韓国紙の東亜日報が、複数の政府筋への取材に基づき伝えたところによると、先月、中国側から韓国当局に日中韓首脳会談の開催を提案してきたという。日韓との対話に消極的だった中国が態度を変えた理由について同紙は「結局、米国との対立が最近、再び激化したためとみられる」と分析。「韓日当局は3か国の首脳が早期に会うことに前向きな立場だったことから、中国側の提案後、首脳会談の開催議論が急浮上した」と伝えた。

また、共同通信は開催の狙いについて「日韓には、ロシアとの関係を深めながら核・ミサイル開発を進める北朝鮮への働きかけを中国に促したい思惑がある。一方、中国は日米韓による安全保障面の連携拡大を警戒しており、日中韓首脳会談開催により、くさびを打ちたい考えがあるとみられる」と伝えた。

首脳会談が実現すれば、北朝鮮問題をはじめとする東アジア情勢や、経済分野での協力関係の在り方などが議論される見通し。朝日新聞は「従来は歴史認識問題をめぐり日本と中韓の対立構図が目立ったが、今回は接近する日韓と中国との間に溝を抱える中での対話となる」と伝えた。

首脳会談について林芳正官房長官は5日、「早期開催に向け調整を行う」と述べた。約4年半ぶりの開催が現実味を帯びてきているが、朝日新聞は「実際にサミットを開催できるかは中国次第。ギリギリまで分からない」とする外務省幹部の話を伝えた。

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