<W解説>韓国大統領選、保守系は候補者を一本化できるか?
<W解説>韓国大統領選、保守系は候補者を一本化できるか?
来月3日投開票の韓国大統領選に今月2日、保守系のハン・ドクス前首相(75)が立候補を表明した。また、翌3日には保守系与党「国民の力」がキム・ムンス前雇用労働相を党公認候補に選んだ。大統領選をめぐっては、各世論調査で左派系最大野党「共に民主党」の公認候補、イ・ジェミョン(李在明)前党代表が次期大統領にふさわしい人物としてトップを独走している。イ氏に対抗するため、現在は無所属のハン首相とキム氏の間で、今後、保守系候補の一本化に向けた動きが加速するものとみられ、注目される。

韓国では先月、ユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことを受け、6月3日に大統領選が実施されることになった。

尹氏の罷免に伴い、大統領の職務を代行していたハン氏は、2日に記者会見を開いて出馬を表明。「国と国民のための未来ではなく、個人と陣営の利益を追及する政争が危険水域に達した」とし、「われわれが苦労して興した国が無責任な政争で足元から崩れるのを放置してはならない」と訴えた。「私は誇らしい韓国国民の公僕として経済発展の第一線で生きてきた。国益の最前線である通商外交まで政争の種にする現実が、私の良心と常識では到底納得できなかった」と出馬理由を語った。

ハン氏は南西部チョンジュ(全州)市出身。ソウル大学経済学部卒業、米ハーバード大大学院経済学博士課程修了。特許庁、通商産業部(現・産業通商資源部、部は省に相当)に勤務し、同部では次官を務めた。その後、キム・デジュン(金大中)政権で外交通商部(現・外交部)通商交渉本部長、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権では経済副首相と首相を務め、韓米FTA(自由貿易協定)交渉を主導した。イ・ミョンバク(李明博)政権時には2009年2月から3年間、駐米韓国大使を務めた。進歩・保守政権で重責を担った人物として知られる。2012年2月から3年間韓国貿易協会会長を務めた。尹政権でも首相を務め、昨年12月に非常戒厳を宣布した尹氏が国会で弾劾訴追されると、大統領の権限を代行した。しかし、その後、ハン氏も非常戒厳の宣布を「幇助(ほうじょ)」したなどとして弾劾訴追された。だが、憲法裁判所は3月、ハン氏の弾劾訴追を棄却。ハン氏は大統領代行に復帰した。ハン氏は当時、「憲法裁の賢明な決定に感謝する」と述べ、国民に向けての談話では「超党派的な協力が当然である主な国政懸案を安定感とスピード感を持って進めるよう、私から渾身(こんしん)の努力を尽くす」と語っていた。

今月2日に大統領選出馬を表明したハン氏は、大統領職代行、首相を辞任した理由について前日の国民に向けた演説で「われわれが直面している危機を克服するために私ができること、やらなければならないことをしようと、職を辞することを決めた」と説明した。
ハン氏は改憲と通商問題の解決、国民統合を公約に掲げ、「大統領選挙を通じて国民の選択を受けられるよう全力を尽くす」と述べた。改憲は任期2年目までに終え、3年目に総選挙と大統領選を実施し、自らは直ちに退くとした。通常の韓国大統領の任期は5年だ。

一方、与党「国民の力」は3日、キム・ムンス前雇用労働相を党公認候補に決定した。キム氏は公認候補を選ぶ決選投票の結果、ハン・ドンフン前党代表を抑えて選ばれた。韓国の公共放送KBSは結果について「(キム氏は)尹錫悦前大統領の弾劾に一貫して反対の立場を示してきた人物で、保守系の強硬な支持層からの支持を集めたものとみられている」と分析した。キム氏は保守の伝統地盤の南東部キョンサンナムド(慶尚南道)出身。1970~80年代は労働運動や民主化運動に参加した。国会議員を1996年~2006年まで3期、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)知事を06年~14年まで2期務めた。尹政権で雇用労働相に任命された。一方、極端な発言でこれまで物議を醸すこともあった。

大統領選をめぐっては、キム氏の有力なライバルとされる「共に民主党」の公認候補、李在明前代表が各世論調査で支持率40%前後を維持してリードしている。保守系の「国民の力」としては、李氏に対抗するため、保守系候補の一本化が不可欠とみられる。前述のように、保守系では、ハン氏が出馬を表明している。キム氏は李氏の大統領就任を防ぐためならば、あらゆる勢力と連帯すると明言しており、通信社の聯合ニュースは「ハン前首相との一本化の動きが注目される」と伝えた。ハン氏は保革の両政権で首相を担った経験があり、保守層のみならず中道層も取り込めるとの期待から、「国民の力」内でもハン氏に一本化するべきとの声が上がっている。
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