金氏はかねてから観光産業の発展に強い関心を示してきており、同地区の整備は金氏の肝いりのプロジェクトとされる。実際、金氏は同地区の工事現場を、これまで何度も視察に訪れてきた。
同地区にはホテルのほか、スポーツ施設や商業施設などが整備された。北朝鮮メディアは「国宝級の海岸観光都市の誕生だ」としている。
先月24日に開かれた完工式には金総書記やリ・ソルジュ(李雪主)夫人、娘のジュエ氏らが出席した。金氏は、観光地区が完成したことについて「文化観光発展に関する(朝鮮労働)党と政府の方針を実現する道のりにおける誇り高い第一歩だ」と喜びを口にし、観光産業について「地域振興を推進し、国家の経済成長に貢献する動力になる」とした。
金氏は完工式でテープカットをした後、地区内に整備された大型の屋外プールエリアを娘のジュエ氏や李夫人と共に視察。朝鮮中央テレビが公開した映像からは、ウォータースライダーを男性が滑り降りる様子を、プールサイドで眺める金氏らの姿が確認できる。水しぶきが上がり、ジュエ氏が思わず驚く様子も映っていた。
この日、李夫人の姿は2024年1月1日以来、約1年半ぶりに確認された。一方、ジュエ氏は金氏の公式活動に頻繁に同行している。このことについて、韓国の通信社、聯合ニュースは韓国・北韓大学院大学のヤン・ムジン総長の見解を伝えた。聯合によると、ヤン氏は「李氏はこれまで、後継者となる可能性が高いジュエ氏を前面に出すために公の場での露出を減らしていたというのが合理的な見方」とし、「ある時からジュエ氏と共に登場することで『家庭の安定感』を示し、これを社会と国の安定感につなげようとしている」と分析した。聯合は完工式に出席した3人の様子について「写真を見ると、白いツーピースのスーツが目を引くジュエ氏とは異なり、李氏は比較的カジュアルなパンツ姿だ。李氏は夫や娘と話しながら笑顔を見せたが、金正恩氏とジュエ氏にスポットライトが当たると一歩後ろに下がり、『内助の功』を発揮した」と指摘した。一方、夜の式典で金氏は、自身の思い入れが強いリゾート地が完成したことへの嬉しさからか、涙ぐむ姿が見られた。
同地区では、本日7月1日から、国内客向けにサービスを開始した。今後はロシアなどからの観光客受け入れも視野に入れているとみられる。北朝鮮は今年2月、コロナ禍以降、5年ぶりに世界各国からの団体観光客の受け入れを北東部の経済特区、ラソン(羅先)に限って再開。3月にはそのツアーを一時中断したが、4月には、6年ぶりに首都ピョンヤン(平壌)で平壌国際マラソン大会を開催し、外国人ランナーの参加も認めるなど、受け入れ再開に舵を切っている。
金氏の肝いりの同地区の整備事業には巨額の予算が投じられたとみられ、採算を取るためにも外貨獲得が期待できる外国人観光客の受け入れは不可欠だろう。金氏も「世界的な観光地として魅力を示すことになる」と海外からの観光客誘致を示唆している。
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