李氏をめぐっては、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に関連し、前回大統領選の候補者だった2021年に虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反罪に問われ、昨年11月の一審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。しかし、この判決に、李氏側と検察の双方が控訴し、ソウル高裁は今年3月、逆転無罪を言い渡した。検察側の上告後、大法院はこの事件を裁判官全員で審理する「全員合議体」を構成し、審理を開始した。大法院は李氏の発言の一部について「虚偽事実の公表」にあたると判断。二審判決を破棄し、ソウル高裁に審理を差し戻した。
今回の大法院の判断について、李氏は1日、記者団に対し、「私の考えとは全く異なる方向の判決だ」とした上で、「政治は結局、国民が行うものだ。国民の意向に従うべきだ」と述べた。「共に民主党」は大法院を強く非難。同党のチョ・シンレ首席報道官は会見で「大法院の判決は明白な政治批判であり、拙速な裁判だ。大法院の不当な大統領選介入を強力に糾弾する」と述べた。
李氏は6月3日投開票の大統領選の「共に民主党」公認候補。各世論調査の結果から、最も次期大統領に近い人物だ。他候補を引き離し、独走を続けているが、今回の判決の前後の期間に行われた候補支持調査では、李氏の支持率と保守系候補の支持率の差が縮まった。世論調査会社リアルメーターは先月30日から今月2日にかけ、李氏と与党「国民の力」のキム・ムンス前雇用労働相、「革新新党」のイ・ジュンソク前党代表との仮想の三つ巴(どもえ)の対決を想定し、支持率調査を実施。李氏は46.6%の支持を得て、トップ独走は変わらなかったものの、前回調査の50.9%から4.3ポイント下がった。大法院による李氏の無罪判決破棄が影響したものとみられている。
韓国の法律は、上級審の判断が下級審の判断を拘束すると定めている。このため、高裁は今後、李氏に有罪判決を出す見通しだ。高裁で決める量刑によっては被選挙権の停止となる。
これまで李氏に吹いていた追い風が逆風に転じかねない事態に、「共に民主党」はいら立ちを募らせている。怒りの矛先をチョ・ヒデ大法院長に向けており、同党のキム・ミンソク大統領選常任共同選挙管理委員長は、大法院が3月28日に検察の上告を受理してから、5月1日に無罪判決を破棄した、その判断の迅速さを疑問視。4日に記者会見を開き、「大法院の裁判官は、本当に6万ページに上る裁判資料を短期間に読むことができたのか」とし、「国民は本当に裁判官が資料を呼んだのかを知りたがっている。国民の要望に答えられないのなら、最終的にチョ氏は責任を取らなければならない」と主張した。党内では、「司法府の大統領選介入」などと批判が出ており、チョ氏を弾劾訴追すべきとの声も飛び出した。これに対し、与党「国民の力」は、「共に民主党」が李氏を超法規的な存在にしているとして「立法内乱」「集団狂気レベルの司法府への圧迫総力戦」などと非難している。
李氏の差し戻し控訴審の初公判は15日、ソウル高裁で開かれる。「共に民主党」は党内で上がっているチョ氏の弾劾訴追推進については保留とし、15日の公判期日を変更するよう高裁に求めることを決めた。前出の同党選挙対策委員会のノ報道官は、「時間がないため先制対応に出るべきとの意見も非常に多かった」とし、「高裁判決後に候補資格をはく奪される事態に直面する可能性もあるとの危機感もあった、多くの議員が高裁での手続きを最大限遅延させるべきだと主張し、高裁判決自体が出ないようにすべきとの意見も少なくなかった」と説明した。
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