トランプはなぜ「南アフリカの白人」に執着するのか
トランプはなぜ「南アフリカの白人」に執着するのか
米国のドナルド・トランプ大統領は、政権1期目から南アフリカ共和国の白人農民問題を取り上げてきた。今年3月には駐米南ア大使を追放し、今月には世界中からの難民受け入れを中止したにもかかわらず、南アの白人だけを難民として受け入れた。21日(現地時間)の南アのシリル・ラマポーザ大統領との首脳会談では、外交的非礼を冒してまで直接「白人迫害」について問い詰めた。果てはコンゴ内戦の写真を、南ア白人迫害の証拠として提示するまでに至った。

 トランプ大統領はなぜ南アの白人にこだわるのか。

 「白人が黒人に差別される社会」は、トランプ大統領および保守的な白人層にとって決して受け入れられない未来である。トランプ大統領は南アを利用して、「白人がアメリカ社会の主流から追いやられ、いずれ有色人種の犠牲になるかもしれない」という保守白人有権者の恐怖を刺激しているという分析がある。

 南アフリカの政治的権力は、1994年のアパルトヘイト(人種隔離政策)廃止以降、黒人多数派に移ったが、経済的不平等は依然として残っている。全人口の7%に過ぎない白人が、南アの土地の半分以上を所有している。一方、人口の81%を占める黒人は依然として深刻な貧困状態にある。

 しかし、トランプ大統領の言うような「大虐殺」とはほど遠い。南ア警察庁によると、昨年基準で南アで発生した殺人事件2万6000件余りのうち、農場関連の殺人事件は1%未満の44件にすぎ、そのうち農場主を標的とした事件は8件だけだった。2020年4月から昨年3月までに南アの農場で殺害された225人の犠牲者のうち、101人は雇用された労働者で、その多くが黒人であり、白人は53人だった。

 それにもかかわらず、トランプ大統領は南アを「白人が黒人に迫害されている国」とするストーリーを作り上げた。このストーリーはアメリカの保守的な白人有権者に強く訴えかけた。実質的には「あなたが支配していた国で、いつかは被害者になるかもしれない」というメッセージである。南ア出身の白人億万長者イーロン・マスク(テスラCEO)も、自分が白人だから南アでスターリンク事業の許可が下りなかったと発言し、この主張を後押しした。

 トランプ大統領が政権に就いてから、多様性、公平性、包括性(DEI)プログラムを大幅に縮小したのも同様の文脈だ。彼は就任直後、連邦政府のDEIプログラムを終了する大統領令に署名し、連邦機関のDEI関連部門を廃止し、関連職員を解雇した。近年、アメリカで多様性・多文化尊重文化が広まり、ポリティカル・コレクトネス(PC)が強化される中で危機感を抱いた白人保守層を狙った行動だ。

 南アのドキュメンタリー制作者リチャード・ポプラックは、22日付のニューヨーク・タイムズ(NYT)に寄稿した「南アの詐欺劇がホワイトハウスに上陸する」というタイトルのコラムで、「南アではアパルトヘイトのストーリーをひっくり返し、過去の抑圧者を被害者として描こうとする試みが頻繁にある」とし、「白人アフリカーナーを逆差別の被害者、さらには標的にされた大量虐殺の被害者として描こうとする試みは、世界的に広がっている白人代替陰謀論と通じるものがある」と指摘した。
Copyrights(C) Edaily wowkorea.jp