<W解説>「在韓米軍の一部移転検討」と米紙報道=韓国で発足する新政権に突きつけられる課題
<W解説>「在韓米軍の一部移転検討」と米紙報道=韓国で発足する新政権に突きつけられる課題
米紙ウォールストリート・ジャーナルは今月22日、トランプ米政権が在韓米軍のうち約4500人を撤収させ、米領グアムなどインド太平洋地域に再配置することを検討していると報じた。一方、韓国国防部(部は省に相当)は「韓米の間で議論された事項は全くない」と報道を否定した。米国防総省も「事実ではない」としている。だが、韓国で来月3日に投開票される大統領選を控えたタイミングで出てきた報道に、韓国紙のハンギョレは「トランプ大統領をはじめとする米国政府の上層部がこの間、在韓米軍の『中国けん制』用への転換などの根本的変化を推進してきたことを考慮すると、在韓米軍問題は新政権が発足次第、解決すべき最重要課題となるとみられる」と伝えた。

ウォールストリート・ジャーナルは、国防当局者2人の話として在韓米軍削減説を報じた。同紙が伝えたところによると、部隊再編を進める国防総省が選択肢の一つとして検討しているものだといい、最終決定ではないという。報道されている撤退4500人という人数は、在韓米軍の約15%にあたる。トランプ米大統領は、1期目にも在韓米軍の縮小・削減をちらつかせ、韓国に防衛費分担金の引き上げを迫った。だが、実際には兵力の調整は行われなかった。

韓国国防部は23日、ウォールストリート・ジャーナルの報道を否定した上で「在韓米軍は韓米同盟の核心戦力として韓国軍と強固な連合防衛体制を維持し、北(朝鮮)の侵略と挑発を抑制することで朝鮮半島や地域の平和と安定に貢献してきた」とし、「今後もそのような方向に発展するよう米側と協力していく」と述べた。また、通信社の聯合ニュースによると、韓国軍の当局者は、「在韓米軍の兵力の変化は韓米間の同盟の精神、相互尊重に基づき、両国間の協議が必ず必要な事案」とし、「韓米安保協議(SCM)、韓米軍事委員会(MCM)などの過程を経なければならない」と説明した。

ウォールストリート・ジャーナルの報道を受け、韓国紙のハンギョレは、韓国で大統領選が来月3日に迫り、新政権の発足を控える中、「米メディアの報道が波紋を呼んでいる」と伝えた。その上で同紙は、「韓国の新政権発足の直前のこのような報道は、防衛負担金の再交渉圧力まで考慮した、米政府側による布石だとも考えられる」とし、「『在韓米軍削減』をちらつかせて、韓国の新政権に防衛費の大幅引き上げ、中国けん制への同調を迫ることを意図したものとも解釈できる」と指摘。「韓国の次期政権は、トランプ政権との関税・貿易交渉とともに、在韓米軍と韓米同盟の新たな未来の安保課題に徹底して備え、解決していかざるを得ない」とした。

一方。韓国紙の朝鮮日報は24日付の社説で、米国防総省はウォールストリート・ジャーナルの報道を否定していると伝えた上で、「米軍は『中国けん制』に集中し、核兵器を除く在来兵器に対する防衛はその地域の同盟国自ら担当するよう求めているのだ」と指摘。国防総省の政策担当次官が昨年、「在韓米軍を中国に集中する形に再編し、韓国は北朝鮮の在来兵器による攻撃への防衛を今以上に担うべきだ」と発言していたことを紹介し、「『4500人削減検討』はいわば予告されていたのだ」と解説した。社説は「この措置で朝鮮半島における戦争抑止に問題が生じるわけではない」とし、「米軍が北朝鮮に対して核攻撃の抑止に加え、監視と偵察さえしっかりと支援してくれれば、戦争は十分に抑止できるはずだ」と楽観視した。その上で「問題はトランプ政権が(北朝鮮の)キム・ジョンウン(金正恩)総書記とのイベントのために在韓米軍カードを使うケースだ」とし、「トランプ大統領は2018年にも米朝首脳会談を実現させるため韓米同盟の核心となる合同軍事演習をストップさせた」と指摘。在韓米軍を金総書記との交渉力カードとするのは「次元が異なる問題だ」とし、「トランプ大統領も今後何をするか分からないため、この点にも準備が必要になってくるだろう」とした。
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