朝鮮戦争は朝鮮民族の分断国家として1948年に成立した韓国と北朝鮮の間で生じた、朝鮮半島の主権をめぐる国際紛争。1950年6月、北朝鮮が武力による国家の統一を目指して韓国に攻め入ったことから始まった。国際連合は、北朝鮮への制裁を決定し、米軍を主力とする国連軍を派遣。これに対し中国は、中国人民義勇軍を送って北朝鮮を支援した。韓国、北朝鮮の双方に多くの犠牲者が出た一進一退の戦いは、53年に休戦協定が結ばれるまで続いた。休戦協定は、1953年7月27日に国連軍と北朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者間で締結された。韓国は休戦に反対し、署名を拒否したが、この協定により北緯38度線付近に軍事境界線が設定され、境界線から南北それぞれ約2キロは非武装地帯(DMZ)とされた。
今月25日、朝鮮戦争の勃発から75年を迎えた。依然として軍事境界線が存在し、南北の兵士が銃口を向けている現状は現在も変わりがない。李氏は同日、SNSで朝鮮戦争に言及。「戦争は、われわれの生活を根こそぎ揺るがした。数多くの人たちが家族を失い、故郷を去らなければならず、平穏だった生活が無残に破壊された」とし、「それでも我々は再び立ち上がって希望を抱き、傷を乗り越え、よりよい明日に向かって進んだ」と投稿した。その上で李氏は「今日の韓国は決して自然にできたものではない。戦場を守った国軍将兵と参戦勇士、遺族、そして戦争の傷を背負って生きてきた国民の皆さんの犠牲と献身があったからこそ可能だった」とし、「二度と戦争を経験することのない国をつくることが多くの方々の犠牲と献身に正しく応える道」とし、「軍事力だけ頼って国を守る時代は終わった。戦って勝つより、戦わずに勝つことがより重要だ。最も確実な安全保障は戦う必要がない状態、つまり平和をつくることだ」と朝鮮半島の平和構築に決意を示した。
今月4日に大統領に就任した李氏は、尹前政権の対北強硬政策から方針転換し、対話を通じた南北関係の改善を掲げている。今月11日には、南北の軍事境界線付近で実施してきた北朝鮮向けの軍事宣伝放送を停止した。また、新閣僚の人選を進める中で、統一部(部は省に相当)長官候補に、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権でも同部長官を務めた、与党「共に民主党」のチョン・ドンヨン氏を指名した。チョン氏は2004~05年の長官在任時、特使の資格で北朝鮮を訪問し、当時のキム・ジョンイル(金正日)総書記と単独面談した。また、北朝鮮の核兵器放棄と核拡散防止条約(NPT)復帰などを盛り込んだ声明も、チョン氏が長官在任中に開かれた6者協議で合意された。20年前に統一部長官を務めたチョン氏を、李氏が再抜てきしようとしていることについて、韓国紙のハンギョレは「行き詰った南北関係に活路を見出そうとする李大統領の意志がうかがえる」と解説した。チョン氏は24日、報道陣に対し、「まず平和を定着させることが5000万人の(韓国)国民の命令」と述べた。また、南北の交流が6年間にわたって完全に途絶えている状態について「非正常」とした上で、意思疎通不在の状況を解消することが(統一部の)最初の課題だ」とし、自身が長官に就任した際の南北の対話再開に意欲を示した。
統一部は19日、人道支援を目的とする韓国の民間団体の北朝鮮住民との接触について、申請のあった2件を承認した。尹前政権では、南北関係の悪化などを理由に、民間団体による北朝鮮との折衝を事実上禁止していたが、李政権はこの緩和を進めている。通信社、聯合ニュースによると、統一部当局者は「民間レベルの北との意思疎通チャンネルの復旧が必要な状況だと判断し、関係機関との協議を通じて民間による北の住民との接触申請を積極的に検討することが決まった」と説明しているという。
南北対話再開に意欲を見せる李政権だが、北朝鮮は現在のところ、これに呼応した動きを見せていない。ただ、韓国が軍事境界線付近で実施してきた北朝鮮向けの軍事宣伝放送を11日に停止したのに対し、北朝鮮も同付近で韓国に向けて行ってきた「騒音放送」を同日夜から停止した。しかし、韓国側の措置を受けての対応かどうかは定かではない。
北朝鮮では、21~23日に朝鮮労働党中央委員会の拡大会議が開かれたが、公表された内容に、李政権に関する言及はなかった。韓国の通信社、聯合ニュースは「今回の総会で金正恩氏が、トランプ米政権と韓国の李在明政権が先ごろ北朝鮮との関係改善の意向を示したことに対し、何らかのメッセージを発信するとの見方もあったが、公表された内容に関連した言及はなかった」と伝えた。
金総書記は昨年、憲法を改正して韓国を「主敵」と定め、これに沿った措置として、韓国につながる道路と鉄道を爆破した。李政権が進める融和策に、北朝鮮が今後、何らかの動きを見せるのか注目される。
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