<W解説>広島原爆投下から80年、朝鮮半島出身者も多数被爆=韓国メディアは支援法の不十分さ指摘
<W解説>広島原爆投下から80年、朝鮮半島出身者も多数被爆=韓国メディアは支援法の不十分さ指摘
広島への原爆投下から本日6日で80年となった。原爆投下では、植民地支配下の徴用などで日本に渡った朝鮮半島出身者も被爆した。5日には、広島に投下された原爆で犠牲になった韓国人の慰霊祭が広島市中区の平和記念公園で開かれた。また、2日には、朝鮮半島出身の全ての原爆犠牲者を慰霊する会として、在日朝鮮人の被爆者らによる広島県朝鮮人被害者協議会が初めて追悼集会を開いた。広島・長崎で被爆した朝鮮半島出身者は数万人とも言われるが、実態はいまだわかっていない。

5日の韓国人の慰霊祭には、遺族ら約230人が参列した。在日本大韓民国民団(民団)広島県地方本部が主催し、今年で56回目。同本部のキム・ギソン団長は追悼の辞で「世界平和への願いを胸に刻み、被爆の記憶を次の世代と世界へ発信することに最善を尽くす」と述べた。また、2日に広島市内で開かれた、広島県朝鮮人被害者協議会による初の追悼集会には約110人が参列した。同協議会会長で、胎内被爆者のキン・ヂノさんはあいさつで「若い世代も含めた同胞、日本の市民と共に歴史を引き継ぎ、未来につなげていけるよう皆で手を携えることを願う」と話した。同協議会は広島平和記念公園内への南北統一慰霊碑の建立を目指しているが、実現していない。

韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は5日、SNSで犠牲者への哀悼の意を表した。李氏は「80年前、日本に投下された二つの原子爆弾は、多くの人々の命を一瞬にして奪った。在日韓国人も大きな犠牲を払わなければならず、被害者と遺族は長い間苦しんできた」とし、「戦争による惨状が繰り返されないよう、平和の価値をより強く守っていく」と投稿した。また、李氏は日本による植民地支配からの解放後に韓国に戻った被爆者のために2017年に施行された「原爆被害者支援特別法」に言及。同法施行により実質的な支援基盤は整ったものの、依然として不十分な点が多いと指摘。「原爆の傷痕を癒やすため、引き続き努力していく」と強調した。

韓国には日本の植民地時代に広島や長崎に渡って被爆した人が多く暮らす街がある。南部のキョンサンナムド(慶尚南道)ハプチョン郡だ。存命の韓国人被爆者約1600人のうち約250人が同郡在住なことから、「韓国のヒロシマ」とも呼ばれる。

先月には、広島県の横田美香副知事がハプチョンを訪問した。横田副知事は原爆資料館を訪れたほか、韓国人原爆犠牲者約1100人の位牌が納められた原爆被害者福祉会館で追悼した。また、被爆者や被爆2世たちと面会した。先月のNHKの報道によると、横田副知事は「韓国人の方の被爆の体験や思いを初めて聞くことができた。世界平和や核根絶に向けて何ができるのか、きょう聞いたことを参考にしていきたい」と述べた。また、韓国原爆被害者協会のイ・ギュヨル会長は「原爆投下から80年になる中、日本の自治体の幹部が韓国の原爆被害者にあったのは大きな意味のあることだ」と話した。

日本政府による徴用や出稼ぎなどで広島・長崎に渡り、被爆した朝鮮半島出身者は数万人とも言われるが、実態は不明。一方、韓国政府と研究機関は、韓国人原爆被害者は約7万人に上り、生存者は約1800人と推計している。

昨年、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した際には、韓国原爆被害者協会のチョン・ウォンスル会長と被爆2世のイ・テジェ韓国原爆被害者子孫会会長も授賞式に出席した。日本被団協は韓国人被爆者ら日本国外に住む被害者も授賞式に出席するメンバーに加えていた。このことについて、韓国の通信社、聯合ニュースは当時、「原爆被害者が日本のみに限らないことを示す意味があると受け止められる」と伝えた。

聯合は今月3日配信の記事で、前出の「原爆被害者支援特別法」が2016年に制定されるも、「被害者や被爆2世らに対するケアが十分でなく、苦しみが続いている」と指摘。同法は被爆1世の支援を主な目的としており、改正の必要性が求められていることなどを伝えた。
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