<W解説>退任表明した石破首相、今月末にも韓国訪問へ=地方都市で開催予定の理由とねらい
<W解説>退任表明した石破首相、今月末にも韓国訪問へ=地方都市で開催予定の理由とねらい
石破茂首相が今月末にも韓国を訪問する方向で調整していることが分かった。12日、FNN(フジニュースネットワーク)などが報じた。韓国の地方都市で、イ・ジェミョン(李在明)大統領と日韓首脳会談を行う方向で調整が進められているという。石破氏は10月にも退任する見通しで、これが首相として最後の外国訪問となる見込み。

先月下旬には、李氏が6月の大統領就任後、初めて訪日し、石破氏と会談した。両首脳は1965年の日韓国交正常化からこれまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を安定的に大きく発展させていくことで一致した。また、北朝鮮の核・ミサイル開発の抑止に連携して取り組む方針を確認したほか、経済や文化交流、少子高齢化への対策など幅広い分野で関係強化を図っていくことを申し合わせた。人的交流のさらなる拡大に向け、ワーキングホリデーの制度を拡充することも合意した。

両首脳は会談後、17年ぶりに首脳会談の成果を文書で発表した。会談では、国際社会の様々な課題に対し、両国が共に協力していくことを確認したと記した。また、65年の国交正常化以降これまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致したと明記した。

先月の李氏の訪日は、李氏と石破氏による首脳の相互往来「シャトル外交」の第1弾に位置付けられた。日韓シャトル外交は、当初はリゾート地のようなところで気軽に行うことを目的とし、2004年7月、韓国の済州島で当時の小泉純一郎首相とノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領との間で実施された。両首脳はその後、2004年12月に鹿児島県指宿市、2005年6月にソウル市で会談を重ねたが、小泉氏の靖国神社参拝に韓国で反発が強まり、日韓関係の悪化を受けて一旦中断した。その後、2008年にイ・ミョンバク(李明博)大統領と福田康夫首相の間で復活するも、2011年12月に京都で行われた李明博氏と野田佳彦首相との間で行われた会談で、慰安婦問題をめぐる応酬となり、以後断絶した。パク・クネ(朴槿恵)大統領は訪日せず、ムン・ジェイン(文在寅)大統領は安倍晋三首相と「シャトル外交」を再開することで合意したものの、本格的な実現には至らなかった。しかし、2023年5月に、当時のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田文雄首相との間で12年ぶりに再開した。

先月の石破、李両首脳による会談では、地方創生など社会問題に関する当局間協議の立ち上げでも合意。李氏は、石破氏が地方創生を掲げてきたことも踏まえ、次回の会談を韓国の地方都市で開催したいと提案した。

今月12日、FNNなど、日本メディアが複数の政府関係者への取材を踏まえ、伝えたところによると、石破氏は今月30日から2日間の日程で韓国の地方都市を訪問し、李氏と会談する方向で調整しているという。

一方、石破氏は今月7日、辞任を表明。この際、韓国メディアも速報した。韓国で、石破氏は日韓関係に比較的穏健とみられており、韓国メディアは次期政権が今よりも保守的な性格が強くなる可能性もあるとして、日韓関係の不確実性が高まったなどと伝えた。

李氏は就任から100日になるのに合わせて11日に行った記者会見で、石破氏の辞任表明を受けた今後の日韓関係について言及。「基本的な原則にのっとって、協力することは協力し、ただすことはただしていきたい」と述べ、新政権との間でも、引き続き連携を進めたい考えを示した。

今回の石破氏の訪韓は「シャトル外交」の第2弾であると同時に、石破氏にとって首相として最後の外国訪問となる見通し。日本経済新聞は「(石破氏の)退陣前に安全保障や通商などの課題を話し合う。次期政権に良好な日韓関係を引き継ぐため地ならしをする」とそのねらいを解説した。

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