<W解説>新しく駐日韓国大使に着任したイ・ヒョク氏とは?
<W解説>新しく駐日韓国大使に着任したイ・ヒョク氏とは?
韓国政府は先月26日、新しい駐日韓国大使に、イ・ヒョク氏(67)を任命した。李氏は同日、着任し、羽田空港で記者団の取材に応じ、「両国間には歴史問題を含む厳しい問題はあるが、他の協力分野に悪影響を与えないように管理していくのが基本方針だ。多様な分野で活発な交流が行われるよう、大使として最善を尽くしたい」と語った。6月に発足したイ・ジェミョン(李在明)政権は国益重視の「実用外交」を掲げている。

駐日韓国大使は、韓国で新政権発足に伴い、ことし7月にパク・チョルヒ前大使が離任して以降、これまで空席になっていた。

李大使はコリョ(高麗)大学経済学科卒。1979年に外務高等考試(外交官候補者選抜試験の前身)に合格し、翌80年に外務部(現外交部、外務省に相当)に入部した。アジア太平洋局長、駐日公使、駐フィリピン大使、駐ベトナム大使などを歴任し、最近まで日韓交流を推進する団体「社団法人韓日未来フォーラム」の代表を務めた。過去に3度の日本勤務経験があり、日本通として知られる。

李氏は東京入りした先月26日、羽田空港で取材に応じ、「李在明政権の初期に醸成された韓日友好協力ムードを生かし、両国関係が後戻りせず、より進展できるよう最善を尽くしたい」と語った。

現在、日韓関係は良好な状態が維持されてはいるものの、歴史問題などでは日韓双方がそれぞれの立場を主張し、平行線のままだ。先月13日、新潟県佐渡市では世界文化遺産「佐渡島の金山」の労働者のための追悼式が開かれたが、韓国側は欠席した。佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島出身労働者が動員された。韓国側は強制労働に従事したと主張し、当初は「佐渡島の金山」が世界遺産登録されることに反対した。しかし、朝鮮半島出身労働者を含む全ての労働者を追悼する行事を毎年開くとする日本側の表明を受けて賛成に転じた経緯がある。表明通り、追悼式は昨年、ことしと毎年開催されているが、韓国側は2年連続で欠席した。先月13日に開かれたことしの追悼式に出席を見送った理由について、韓国政府の関係者は、追悼の辞の内容に関して、「労働の強制性に関する具体的な表現で接点を見い出せなかった」と説明している。

パク前大使も、ことし7月に離任した際、在任中、最も大変だったこととして、この追悼式をめぐる対立を挙げた。パク氏は当時を振り返り、日本政府が追悼式の名称に「感謝」を入れたいとの主張を崩さなかったとした。パク氏は「追悼式は追悼式でなければならない。形式と内容が追悼式にふさわしいものであるべきだという考えは今も変わっていない」とした。

新しく駐日大使に着任した李氏は、先月、記者団の取材に、歴史問題についても言及し、「当然、韓国政府が持つ立場に従い、厳正に対応する」と強調した。

李在明大統領は、ことし6月の就任以来、石破茂首相と良好な関係を築いてきたが、石破氏は間もなく退任する。今月4日、自民党総裁選が行われ、高市早苗氏が新総裁に選出された。高市氏は今月中旬に召集の臨時国会で新首相に指名される可能性が高くなっている。しかし、韓国では高市氏が歴史問題などで強硬な姿勢を貫くのではと懸念している。高市氏が新総裁に選出された際、韓国メディアは「日本の政治の時計の針は韓日関係が史上最悪に達した『安倍(晋三政権)時代』に回帰するのではないかと懸念の声が早くも出ている」(中央日報)、「協力ムードが熟していた韓日関係に相当な影響が及ぶものとみられる」(聯合ニュース)などと伝えた。

一方、韓国大統領室は「(日韓関係の)肯定的な流れを継続するために引き続き協力していく」とし、新首相との間でも良好な関係を維持していく方針に変わりがないことを強調した。

「国益中心の実用外交」を掲げる李大統領。李新大使は、今月2日に在日韓国大使館が都内で開いた建国記念日「開天節」(10月3日)と「国軍の日」(同1日)を記念するレセプションで、李大統領と石破氏との相互訪問「シャトル外交」に触れ、李大統領が掲げる「実用外交」が最もよく実現されているのが日韓関係だと思うとした。その上で、「激変する現在の世界情勢の中で、韓日両政府や企業、国民がこれまで以上に広く協議、協力することを求める」と述べた。

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