<W解説>なぜ今になって?北朝鮮、初めてロシアへの派兵を認める
<W解説>なぜ今になって?北朝鮮、初めてロシアへの派兵を認める
北朝鮮は今月28日、ロシアによるウクライナ侵攻を支援するため、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の命令でロシアに派兵し、ウクライナとの戦闘に参加していることを認めた。北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会が国営・朝鮮中央通信を通じて発表した。北朝鮮がロシア派兵を公式に認めるのは初めて。

北朝鮮がロシアを支援するために大規模な派兵を行っていたと初めて報じられたのは、昨年10月のことだった。同月には、北朝鮮東部のチョンジン(清津)やハムン、ウォンサン(元山)の港から、ロシアの輸送艦が北朝鮮兵士を極東ウラジオストクに移送。その後、兵士たちはロシア東部の軍事施設で訓練を受けたと当時、伝えられた。11月に入ると、一部が戦闘に参加したことも確認された。韓国政府は、北朝鮮がこれまでに1万人以上を派兵、4000人以上が死傷したとみている。

北朝鮮のロシア派兵が初めて報じられた当時、「最近のロ朝軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢のさらなる悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く地域の安全保障に与える影響の観点から深刻に憂慮すべきものだ」(青木一彦官房副長官)、「もし本当ならば、両国の結びつきが著しく進んでいることを示すことになる。大きな犠牲を出し続けているロシアが、さらにやけになっていることも示している」(米国務省報道官)などと国際社会から懸念や批判が相次いだ。

北朝鮮はこれ以前からロシアとの関係を強めてきており、兵士の派兵に先立ち、武器や弾薬を供与していた。昨年6月、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪れた際、北朝鮮の金総書記は、ロシアと北朝鮮のどちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。ロシアが北朝鮮とこの条約を締結した背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があったとみられている。

北朝鮮、ロシア両政府とも、北朝鮮軍の派兵についてこれまで否定し続けてきたが、北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会は28日、朝鮮中央通信を通じてロシアへの派兵を公式に認めた。

ウクライナ軍が越境攻撃していたロシア西部のクルスク州で北朝鮮軍が戦闘に参加していたとし、同通信が伝えた同委員会の声明では、北朝鮮兵が「大きな貢献をした」と主張した。また、派兵は、前述の「包括的戦略パートナーシップ条約」第4条に基づき、金総書記が決めたとしている。第4条には、「どちらか一方が武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく保有するすべての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」と明記されている。北朝鮮側は、兵士を提供する見返りに、最新の軍事技術をロシア側から得たいとの思惑があったとみられている。

同通信によると、金総書記はクルスク州での戦闘に際し、ロシアに派遣された北朝鮮軍を「祖国の名誉の代表者たち」と特別に強調し、首都・ピョンヤン(平壌)に戦闘遺勲碑を建てる考えを示したという。北朝鮮は、ロシア派兵で犠牲者が出たことも認めた形だ。

これに先立ち、ロシア政府も26日(現地時間)に北朝鮮軍の派兵を初めて認めた。ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は、プーチン大統領とのテレビ会議の中で「北朝鮮軍がクルスク州の解放に貢献し、高い専門性と勇気を示した」と評価した。

北朝鮮とロシアが一転、派兵を認めたのはなぜなのか。ロイター通信によると、韓国統一研究院のホン・ミン氏は、ロイターの取材に「北朝鮮とロシアの首脳がより強い絆を誓うために、外交的パフォーマンスを行う必要が出てきた」との見方を示した。
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