人事聴聞会は、高位公職者の資質と能力を国会が検証する制度。韓国は2000年にこの制度を始めた。聴聞会では公職候補者がその職位にふさわしい人物かを出席議員が検証。公職候補者はこの聴聞会を経て、正式に就任することとなる。
新政権で李大統領から指名された16の省庁の閣僚候補の人事聴聞会は今月14日から始まった。序盤から与野党が激しい攻防を繰り広げ、最大野党「国民の力」は女性家族部(部は省に相当)や教育部など複数の閣僚候補について、適任ではないとして辞退や指名撤回を求めている。とりわけ同党は、女性家族部長官候補のカン・ソヌ氏への攻勢を強めている。カン氏をめぐっては、自身の補佐官らに対して不当な要求を繰り返したパワハラ疑惑が取り沙汰されている。カン氏は国会議員を務めていたこの5年間に、補佐官を46回も免職にしたとの疑惑が浮上。また、韓国メディアによると、カン氏は補佐官らに自宅のゴミの分別やトイレの便器の修理をさせていたとされる。
14日、カン氏の聴聞会が開かれた。「国民の力」の議員は「パワハラ王 カン・ソヌOUT」と書かれたプラカードを掲げ、辞退を迫った。聴聞会は日付が変わる深夜まで続いた。カン氏は取り沙汰されている疑惑について、細かい事実関係については「誤解だ」とした一方、「全て私の不徳によるものだった」と初めて謝罪した。だが、「国民の力」はカン氏に対し、引き続き辞退を求めていく方針だ。また、女性団体もこれに同調。韓国女性団体協議会は16日、声明を発表し、「韓国女性団体協議会の全国500万人の会員は、公職社会で当然守られるべき最低限の尊重と人権まで無視したカン・ソヌ候補者の態度に深い遺憾を表し、候補者自ら辞退することを強く求める」とした。
また、教育部長官候補に指名されたチュンナム(忠南)大学前総長のイ・ジンスク氏には論文盗用疑惑が浮上している。16日にはイ氏の聴聞会が開かれ、イ氏は謝罪したが、韓国紙の東亜日報によると、与党「共に民主党」の関係者は「イ氏の論文に問題があると判断している。守り切れないカードになっている」との認識を示したという。
閣僚候補に対する聴聞会は本日18日で終了するが、「国民の力」のソン・オンソク非常対策委員長兼院内代表は、疑惑が浮上しているカン・ソヌ氏やイ・ジンスク氏らについて、「任命されれば韓国全体が李大統領の私有物になったと見るほかない」と述べた。東亜日報は17日、「与党内では近く2人の候補のうち、少なくとも1人の進退を決定する可能性があるとの声が上がっている」と伝えた。同紙によると、与党「共に民主党」の執行部は「全ての長官候補に対する聴聞報告書を野党との協議なしに単独で処理してはならない」との指針の下、まずは本日の聴聞会の全日程終了を受け、世論の動向を見た上で大統領室に意見を伝えるかどうかを決める方針という。だが、同紙は「一部の与党議員は2人の候補に対する『不適任』の意見を個別に大統領室に伝えたという」とも報じた。
先月4日に大統領に就任した李氏は、歴代の政権に比べ迅速に閣僚候補を選び、聴聞会に検証を仰いだ。しかし、ここに来てその候補の一部に疑惑が浮上し正式な任命にブレーキがかかっている。人事聴聞会で候補者が適任と判断されれば人事聴聞報告書が採択され、大統領が任命を下し、候補者は正式に就任する。報告書が採択されなくても大統領は任命が可能だが、国会で不適格と判断された人物が要職に就くことになる。李政権の全閣僚が出そろい、組閣を行われるまでには、まだ一山ありそうだ。
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