<W解説>韓国で「鬼滅の刃」ブーム=巻き起こった「旭日旗騒動」はどこへ
<W解説>韓国で「鬼滅の刃」ブーム=巻き起こった「旭日旗騒動」はどこへ
韓国で、日本のアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」が先月22日に公開が始まってから興行ランキングで首位を独走している。同作品の観客動員数は公開2日目に100万人を突破。10日目の先月31日には300万人を超え、今月10日午前の時点で約406万人となっている。週末の興行ランキングは3週連続でトップとなる人気ぶりだ。韓国では2021年に「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開され、この作品も大ヒットしたが、当時と同様、今作品も主人公・炭治郎の耳飾りが旭日旗を連想させるとして、公開前、一部で「旭日旗論争」を巻き起こした。

韓国では、旭日旗は「第2次世界大戦当時、アジア侵略に使用された日本軍の旗であり、多くの国に歴史の傷を思い起させる明白な政治的象徴」と捉えられている。こうしたことから、これまで幾度となく「旭日旗騒動」が起こってきた。2023年12月には、国際サッカー連盟(FIFA)のワールドカップ公式SNSのアカウントで日本の選手を紹介する画像の背景に、一時、旭日旗が用いられ、韓国のネットユーザーらからFIFAに抗議の声が相次いで寄せられた。その後、画像は旭日旗が削除された。昨年5月には、国際パラリンピック委員会(IPC)が公式ユーチューブチャンネルで配信したパラアイスホッケー世界選手権の試合の映像で、日本の選手が旭日旗のロゴとともに表示テロップで紹介されたとして、大韓障害者体育会がIPCに抗議した。

昨年6月には、殉国者と戦没将兵を追悼する「顕忠日」に、南部・釜山市のとあるマンションに旭日旗が掲げられ、物議を醸した。「顕忠日」は祝日で、毎年この日は朝鮮戦争やベトナム戦争により戦死した兵士や日本統治時代の独立運動家らが祀られた国立顕忠院で追悼行事が執り行われる。また、韓国全土にサイレンが鳴らされ、国民は祖国のために命を捧げた人々に黙とうをささげる。国のために戦い、命を捧げた人たちを悼む日に旭日旗が掲げられ、当時、韓国のネットユーザーからは「正気か」などと怒り、呆れる声が上がった。だが、韓国において旭日旗に関連する処罰法は存在しない。マンションの管理事務所には当時、苦情の電話が多数寄せられたが、事務所関係者は掲揚を止めさせることもできず、対応に苦慮した。騒動が大きくなるや、旭日旗を掲げた住民は「旭日旗を掲揚した私の愚かな行動によって心に傷を負ったすべての方に謝罪します。深く反省しており、今後は繰り返さないことを約束します」などとする謝罪文を発表し、旭日旗を撤去した。この住民は掲揚の目的は親日を示すためではなく、行政区との間で続いている対立を多くの人に知ってもらうためだったと説明。「事件の関心を引くために旭日旗を掲揚したことは愚かな判断であり、改めてお詫びします」とした。

韓国で、旭日旗が反日対象になったのは2002年の日韓サッカーワールドカップの頃からと言われており、反日活動を展開する韓国の市民団体VANKが、旭日旗による日本人サポーターの応援を見て問題視したことがきっかけとされる。

「旭日旗は戦犯旗」との一方的な主張に基づく旭日旗騒動は近年、エスカレートしている。著名人が着ている服の柄や、企業の宣伝看板のデザインなど「旭日旗に似ている」という理由で一部の韓国人が度々問題提起している。

「鬼滅の刃」の主人公・炭次郎が着ける耳飾りも、「旭日旗に似ている」として一部の韓国国民が公開前に批判を繰り広げた。2021年に「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が韓国で公開された際も、「VANK」が主導して騒動が大きくなり、耳飾りのデザインが変更された。「無限列車編」の続編となる、韓国で現在公開中の「無限城編」も耳飾りのデザインに修正が加えられている。そのほか、今回は公開前の8月9日、韓国プロ野球の試合で炭治郎らによる始球式イベントが予定されていたが、批判が殺到して中止となる事態も発生した。

だが、いざ、作品が先月22日に封切られると、旭日旗騒動はどこへやら、累計観客動員数は公開から18日目で400万人を突破。作品の関連グッズや単行本も飛ぶように売れるなど、韓国では今、「鬼滅の刃」ブームが巻き起こっている。通信社の聯合ニュースによると、映画評論家のチョン・ジウク氏は取材に「公開当初はマニア層が主導したが、今後は10代から40代までが鑑賞する『ファミリー映画』として当分ヒットが続くとみられる」と予想した。

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