韓国でのAPEC首脳会議の開催は、2005年に南部のプサン(釜山)で開催されて以来、20年ぶり。慶州市の慶州ファベクコンベンションセンターで開催される。テーマは「持続可能な未来の構築」。優先課題として「連結」、「革新」、「繁栄」の3つを掲げ、人工知能(AI)分野での協力や、高齢社会への対応などを主な議題として取り上げる。
開催地の慶州は、紀元前57年から紀元935年まで約1000年にわたり、新羅の都として栄えた古都。韓国有数の桜の名所としても知られる。韓国を代表する寺院の一つ、プルグクサ(仏国寺)と、花崗岩(かこうがん)を積み上げて作られた人工の石窟、ソックラム(石窟庵)はユネスコ世界文化遺産に登録されている。
開催地が慶州に決定したのは昨年6月のことだった。韓国政府は、選定理由に、国家や地域活性化への貢献度が高いこと、ユネスコ世界文化遺産都市であり、文化や観光資源を有することを挙げた。慶州は韓国の伝統文化を世界に発信できる都市でありながら、これまで国際的なイベントを誘致した経験が少なく、今回、APEC首脳会議の開催地となったことで、慶州の認知度向上、地域経済の発展につながるものと期待されている。大韓商工会議所は、デロイト・トーマツ・コンサルティングと共同で分析した結果、APEC開催による経済効果は7兆4000億ウォン(約7900億円)と見込んでいる。内需活性化など短期的な経済効果は3兆3000億ウォン、中長期的な間接効果は4兆1000億円と分析した。雇用誘発効果は約2万3000人と予想した。また、慶州があるキョンサンプクト(慶尚北道)は、開催中の1日当たりの最大訪問者数を7700人、延べ人数を3万人と推定している。
現地では首脳会議のメイン会場であるポムン(普門)観光団地一帯や、晩さん会場となる国立慶州博物館中央広場などで、詰めの準備が進められている。また、期間中は最高レベルの警戒体制が敷かれることになっており、開催が近づく中、警察などは、警備体制の点検に着手した。
また、開催を前に、韓国政府は全国規模の環境整備キャンペーンを展開することを決めた。各国の要人が訪韓するのを前に、国家イメージの向上を図ることなどが狙い。22日には李大統領も国民に協力を呼び掛けた。この日、李氏は自身のSNSに、「今日から10月1日までの10日間は『大韓民国リニューアル週間』です」とした上で、「(名節の)チュソク(秋夕)やAPEC首脳会議を前に、新しい大韓民国、清潔な国土で家族と客人を迎えるための全国民大掃除運動です」と投稿。「多くの方々がこれに参加して下されば、清潔な大韓民国の地を築き上げる大きな力になります」とし、「大韓民国リニューアル週間に清潔で快適な国土を造成し、誰もが誇りを感じられる国を一緒につくり上げることを期待します」と協力を呼び掛けた。期間中は海洋水産部(部は省に相当)が海岸、国土交通部が道路、環境部が河川と公園、農林畜産食品部が農村を担当し、それぞれ整備活動を実施する。地方自治体もボランティア団体と協力し、観光地などの清掃を行うことにしている。
李氏は今月9日の閣議でも全国的な清掃を提案している。李氏はこの日、観光産業の活性化について議論する席で、「ヘリコプターで海岸を飛行したことがあるが、我が国の海岸に真夏なのに雪が降っていた」とし、海岸に多く打ち寄せられた発砲スチロールの海洋ゴミを雪に例え、「観光とも関係のある問題だ」と懸念を示した。
通信社の聯合ニュースが伝えたところによると、今夏の集中豪雨で約1万トンの海洋ゴミが発生している状況という。また、林野など地上に放置された廃棄物の発生量は年間11万トンに上ると推計される。
韓国紙の中央日報は22日付の社説で、「慶州APECは国際行事を越え、北東アジア情勢、さらには国際情勢の分岐点になる可能性がある」と指摘。「開催成功のために、政府と地方自治体は共に総力を尽くして緻密(ちみつ)に準備する必要がある。韓国の外交力を証明する機会にしなければならない」とした。
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