<W解説>韓国国内で期待高まる、中国による「限韓令」解除
<W解説>韓国国内で期待高まる、中国による「限韓令」解除
中国における韓国エンターテインメントに対する事実上の制限「限韓令」が緩和されるとの期待が、韓国国内で高まっている。韓国では、今月1日までアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれ、これに出席するため、中国の習近平国家主席が11年ぶりに訪韓。中韓首脳会談も開かれ、韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は習氏と文化交流の拡大について議論した。夕食会では、韓国の歌手で、大統領直属の大衆文化交流委員会の共同委員長を務めるパク・ジニョン(J.Y. Park)氏が習氏と面会。韓国アーティストによる中国公演の可能性について思いを伝えた。一部では、習氏が中国・北京でのK-POP公演の提案に前向きな反応を示したとの見方も出ている。韓国の公共放送KBSは「(限韓令の)制限が本格的に緩和されれば、公演や音楽配信を通じた経済的な波及効果は大きいとみられている」と伝えた。期待が高まる一方、韓国紙のハンギョレは「限韓令が中国社会全般の規制措置へと進化したことを考えると、限韓令の解除は容易ではないとみられる」と指摘した。

中国は、韓国と米国が2016年、米国の最新鋭地上配備型迎撃ミサイル「高硬度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に合意したことに反発し、同年、韓流コンテンツの流通を制限する「限韓令」を発令したとされる。中国の映画館や動画配信サービスなどで韓国映画の上映を禁止したほか、韓国の大衆文化の輸入や韓流スターの中国での活動などを不許可とした。THAAD配備に反対した中国による事実上の報復措置とされているが、中国政府は限韓令そのものの存在について公式には認めていない。

中国国内で限韓令が敷かれているとみられる背景には、中韓関係の悪化したことが影響しているとの見方があるほか、習近平指導部が中国の自国の文化を重視する中、韓流スターの応援に多額の金を費やす中国人ファンの「推し活」の過熱ぶりを問題視し、中国国内へのマイナスの影響を危惧(きぐ)したとみる向きもある。2016年の発令以降、中国大陸では大規模なK-POP公演は許可されていない。今年9月にはK-POPグループの「Kep1er(ケプラー)」が中国・福州で予定していた公演が、開催の1カ月前に延期。限韓令が依然として続いているとの見方が広がった。

こうした中、1日、中韓首脳会談が開かれ、両首脳は文化協力の拡大が必要との認識で一致した。また、夕食会で習氏と面会した、大統領直属の大衆文化交流委員会の共同委員長で、歌手のパク・ジニョン氏は2日、自身のSNSに面会について投稿。「習近平国家主席にお会いして、会話を交わすことができて本当にうれしかった。傾聴して下さり、素敵なお言葉をいただき、心から感謝申し上げます」とした上で、「大衆文化を通じて、両国の国民がより親しくなることができるよう、さらなる対話を願っている」とつづった。パク氏は同様の文章を中国語でも投稿した。

これに先立ち、与党「共に民主党」のキム・ヨンベ議員は、SNSを通じ「李在明大統領と習近平国家主席、パク・ジニョン大衆文化交流委員長が会話を交わす中、習近平国家主席が北京で大規模公演を行おうという提案に応じ、王毅外相を呼んで指示する場面があった」と明かし、「限韓令の解除にとどまらず、本格的なK-文化進出の門が開かれる瞬間ではないかと期待される」と投稿した。キム氏は韓国国会外交統一委員会の幹事を務めている。

8年以上続いてきた限韓令の解除に期待が高まる一方、大衆文化交流委員会は「習近平主席とパク・ジニョンの対話は、公式の外交行事でのあいさつだと理解している」とした上で、「これに関する過度な解釈には慎重になるべきであり、性急であると判断している」と一線を引いた。

韓国紙のハンギョレは「専門家らは『限韓令の解除は非常に難しい』とみている」と伝え、中国の専門家で、韓国金融研究院のチ・マンス上級研究委員の指摘を紹介した。チ氏は同紙の取材に、限韓令は2016年のTHAAD配備への反発から始まったが、「2021年頃に中国のファンダム文化の発展に驚いた中国当局によってその性格が変わった」と指摘。「限韓令は、青少年に悪影響を与え、中国共産党外部に組織を形成するリスクを防ぐための文化・芸能規制政策へと変わった」とし、「首脳会談や、(中韓関係が)改善したからといって変わることはないだろう」との見方を示した。

同紙によると、2021年に韓国のアイドル選抜オーディション番組を模した中国の番組が、スポンサーの乳飲料メーカーとコラボレーションしたファン投票企画を展開した際、ファンがメーカーの牛乳を大量買いし、その後、廃棄する騒動が起きた。これを受け、中国当局は芸能人の人気ランキングの発表を禁止するなどの規制に乗り出したという。同紙は「その後、中国では、『大規模なK-POP公演』はもちろん、米国や日本のグループの大規模な公演もほとんど実現していない」と伝えた。

また、KBSは「現地で3000人から5000人規模の公演が実際に開催されて初めて、限韓令の実質的な解除といえる」と話す、業界関係者の声を伝えた。

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