<W解説>手詰まり感がぬぐえない拉致問題=日朝首脳会談が開かれるのはいつになるのか?
<W解説>手詰まり感がぬぐえない拉致問題=日朝首脳会談が開かれるのはいつになるのか?
北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさん=失踪当時(13)=が拉致されてから今月15日で48年となった。拉致問題は2002年に5人の被害者が帰国して以降、めぐみさんを含め、被害者の帰国が実現していない。10月に就任した高市早苗首相は「私の代で突破口を開きたい」とし、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記との早期の会談に意欲を示しているが、北朝鮮はこれに表立って反応を示していない。

1977年11月15日、当時、中学1年生だっためぐみさんは、部活動を終えて下校中、北朝鮮の工作員によって拉致された。家族は一日も早い帰国実現を求め、長年活動を続けている。母の早紀江さん(89)は今月11日、会見し、「精も根も尽き果て、会えないのかなと思うこともある」と心境を語った。その上で「早くなんとかならないのかということばかりを願って、総理大臣が変わる度にお願いしてきているが、全然動かない」とし、「日朝首脳会談をしていただかないと、話し合いをしなかったら動かないと思っている」と述べ、2004年以来、開かれていない会談の早期実現を求めた。弟で拉致被害者家族会代表の拓也さんは、「家族が高齢化する中、時間がない」と訴えている。

日朝首脳会談は、2002年9月17日、当時の小泉純一郎首相が訪朝し、初めて行われた。キム・ジョンイル(金正日)総書記(当時)は拉致を認めて謝罪。拉致被害者5人は生存、めぐみさんら8人は死亡と伝えた。会談で両首脳は「日朝平壌宣言」を交わした。同宣言で両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが双方の基本利益に合致し、地域の平和と安定にも寄与することになるとの共通認識を確認した。宣言には国交正常化交渉の再開や日本による植民地支配の謝罪、北朝鮮による核問題解決の約束遵守などが盛り込まれた。

翌月、拉致被害者5人が帰国。そして2004年、小泉氏が再訪朝し、拉致被害者の家族5人が帰国した。しかし、これ以降、拉致問題に関して手詰まり状態が長く続いた。その後、14年に日朝両政府は北朝鮮による拉致被害者らの再調査と日本による独自制裁の一部解除を盛り込んだ「ストックホルム合意」を発表した。北朝鮮は特別調査委員会を設置したが、16年に核実験とミサイル発射を強行。日本が独自制裁を強化したことを受け、北朝鮮は委員会の解体を宣言し、進展への期待もむなしくストックホルム合意もとん挫した。18年6月と19年2月の米朝首脳会談では、トランプ米大統領が拉致問題を提起するも、北朝鮮が具体的な行動に出ることはなかった。拉致被害者は2002年に5人が帰国して以降、一人の帰国も実現していない。

前述のように、北朝鮮はめぐみさんについて、「死亡」としているが、裏付ける証拠はなく、後に北朝鮮側からめぐみさんの「遺骨」と称して出されたものはDNA型鑑定で別人のものだと分かっている。

先月発足した高市内閣は、拉致問題を「最重要課題」と位置付けており、高市氏は今月3日、東京都内で開かれた北朝鮮による拉致被害者の帰国を求める国民大集会に出席し、北朝鮮側に首脳会談を要請したことを明らかにした。高市氏は「金正恩委員長と首脳同士で正面から向き合い、私自らが先頭に立って、様々な状況に応じて、果敢に行動することで、具体的な成果に結び付けたいと考えている。あらゆる選択肢を排除せず、私の代で何としても突破口を開き、拉致問題を解決したい」と強い意欲を示した。

一方、北朝鮮は昨年3月、金総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏が談話を発表し、「日本側とのいかなる接触、交渉も無視し、拒否する」とした。これを最後に表立った反応を示していないが、北朝鮮の朝鮮中央通信が報じたところによると、北朝鮮では今月12日、「千年来の宿敵である日本の万古(遠い昔)の罪悪を暴露・断罪する」歴史学部門討論会が開かれた。韓国メディアのイーデイリーによると、討論会の出席者たちは日本のかつての植民地支配を糾弾し、「時が流れ、世代が百回、千回変わっても、千年の宿敵・日帝がわが人民に残した歴史の傷は決して癒えることはなく、復讐の血の代価を千倍万倍で受け取らねばならない」と述べたという。イーデイリーは「今回の討論会は、高市早苗首相が北朝鮮に首脳会談の開催を求めた後に開かれたもので、注目されている」と伝えた。

15日、めぐみさんが拉致されてから48年となった。拉致問題担当相を兼ねる木原稔官房長官は同日、新潟市を訪れ、めぐみさんが拉致された現場周辺を視察した。その後に出席した拉致被害者の早期救出を求める県民集会で木原氏は、「(自身が)最後の拉致問題担当相になる」とし、「全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆる手段を尽くして取り組んでいく」と述べた。

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