神聖ローマ帝国時代のお金持ちは見栄っ張り?

レーゲンスブルクは遠隔貿易で栄えた街。儲かった商人の中から富豪が誕生すると、彼らはあるものにお金を使い始めます。それは一体なんでしょう?

現代だと高級車や高級腕時計を身に着ける人もいますよね。しかし、神聖ローマ帝国の時代は塔を立てることがステータスでした。しかも出来るだけ高い塔を。富豪商人が建てた「金の塔(Goldener Turm)」は現存する塔の中で一番の高さで約52mもあります。

金の塔(Goldener Turm)

住所:Wahlenstraße 14, 93047 Regensburg, Germany

公式サイト:https://tourismus.regensburg.de/regensburg-erleben/sehenswertes/alle-sehenswuerdigkeiten/baudenkmaeler/goldener-turm.html

さらに、石橋の袂には大きな塩の貯蔵庫があります。神聖ローマ帝国時代、石橋付近はドナウ川からの貿易船や馬車などでにぎわいました。

しかし、当時使用していた倉庫へ塩を運搬するのが難しくなり、1616〜1619年に新倉庫を建設(1620年に手直し)します。建設理由は塩を保管するほかにも、レーゲンスブルクが豊かな国だとアピールするためだったといわれています。

塩は「白い黄金」とも呼ばれ高価なもの。食用以外にも食品の保存や腐敗防止にも重宝されたので、たくさんの塩は富の証でもありました。そんな訳で、レーゲンスブルクの玄関口に大倉庫を建設すれば、訪問者はレーゲンスブルクが豊かな国だと認識すると考えたのですね。

美しい街並みは火災のおかげ?

遠隔貿易を中心に栄え裕福な国へと成長したレーゲンスブルクでしたが、その栄光は永遠には続きません。1810年、神聖ローマ帝国が崩壊し、バイエルンとして新しく生まれ変わったレーゲンスブルクには産業がなく衰退していきます。鉛筆工場や紙タバコ工場など、産業が全くなかったわけではないですが、目立った産業が発達しなかったのです。

さらに、街には老朽化した家が増えていきます。ほとんどが13〜15世紀に建設された家で、貧しい人々には改築する余裕がなく、崩れそうな柱や階段はそのまま放置されていました。

1950年代にはバイエルン州の中でも一番貧しい街といわれるようになり、1955年には火災が発生。劣悪な家屋の状態が明るみに出ます。このままではいけないということで、1970年代に法律が改正。修復の補助金が出るなどして徐々に状態は改善し、現在のような美しさを取り戻しました。

修繕できず放ったらかしにされていた建造物でしたが、よくいえば古い状態のまま現存させることができたわけです。

旧市街に現存する唯一の壁画「ゴリアテハウス」

ドナウ川にかかる石橋から旧市街へ進むと、「ゴリアテハウス(Goliathhaus)」の大きな壁画に出会います。16世紀に描かれた聖書の一場面です。イスラエルを懲らしめていた巨人ゴリアテを、羊飼いの少年ダビデがやっつけるお話。

巨人を恐れるイスラエル兵を差し置いて、ダビデは河原から持ってきた石5つで巨人を倒します。立場上弱い者でも大きな者を打ち負かすことができるたとえとして、現代に語り継がれています。

絵のタッチをよく見てみると、16世紀に描かれたものにしては新しい印象を受けるかもしれません。それもそのはず、この壁画は2012年に塗り直されたもの。通常、壁画は外で雨風に晒されているので40年も経つと損傷して色褪せてきます。つまり、塗り直さなければなくなってしまうんですね。

実際に旧市街にはたくさんの壁画があったといわれていますが、ここが現存する唯一の壁画となりました。言い換えれば、この絵は塗り直すだけの資金力があったことも示しています。

ゴリアテハウス(Goliathhaus)

住所:Goliathstraße 4, 93047 Regensburg, Germany

公式サイト:https://tourismus.regensburg.de/regensburg-erleben/sehenswertes/alle-sehenswuerdigkeiten/baudenkmaeler/goliathhaus.html

代々受け継がれるブラシ職人の技と温もり「ビュルステン・エルンスト」

旧市街を散策していると心躍るような狭い小道にたくさん出会います。もともとレーゲンスブルクは、ローマ人が450m×560mの狭い範囲につくったこともあり、920年と1320年に拡張しているものの、多くの建物が小道に軒を連ねているのです。ゴシック建築がそのまま残るお店も数多くあります。

「ビュルステン・エルンスト(Bürsten Ernst)」は、中世の面影を残すハイド広場から、グロッケンガッセ通りを進んだ先に店を構えるブラシ屋さん。1894年創業の老舗です。

掃除ブラシや動物ブラシ、エスプレッソマシンブラシ……数えきれないほど多種多様なブラシが並び、訪れる人々の好奇心を刺激します。4代目店主のヴァルトラウト・エルンスト氏は夫からブラシ作りを学んだのち、娘さんとともに長きにわたる家族の伝統を守り続けているのだそう。

店の奥には工房があり、今でも美しく実用的なブラシが誕生しています。いいブラシは毛が抜けず、むしろ面倒な掃き掃除が楽しみになるそうで、「良い物を長く使う」そんな一点物を探してみてはいかがでしょうか。

ビュルステン・エルンスト(Bürsten Ernst)

住所:Glockengasse 10, 93047 Regensburg, Germany

公式サイト:https://xn--brsten-regensburg-22b.de/

ドイツ最古のソーセージ店「ヒストーリッシェ・ヴルストキュッヘ」

さて、ドイツ料理といえば思い浮かぶものはなんですか?

肉汁たっぷりのジューシーなソーセージではありませんか? レーゲンスブルクにはドイツ最古と呼ばれるソーセージ店「ヒストーリッシェ・ヴルストキュッヘ(Historische Wurstküche)」があります。

自家製ソーセージにザワークラウト、スウィートマスタードが人々の胃袋を掴んで離しません。

お店は石橋の目の前にあり、1135〜1146年にかけて石橋建設の工事事務所として利用されました。

その後、世界各地からの物資の積み替え地点として栄えたこの場所で、ヴルストキュッヘは多くの湾岸労働者や大聖堂建設の労働者のお腹を満たしてきました。

店内は炭火焼きされるソーセージの匂いで充満。

過去何度も氾濫したドナウ川の水位が、ここまで達したことを示すサインが。当時は、建設作業員たちしか食べることのできなかったソーセージですが、現在は多くの観光客でにぎわいます。

ヒストーリッシェ・ヴルストキュッヘ(Historische Wurstküche)

住所:Thundorferstraße 3, 93047 Regensburg, Germany

公式サイト:https://www.wurstkuchl.de/

バイエルン料理を食べるなら「レーゲンスブルク・ヴァイスブロイハウス」

ドイツにも日本と同じようにご当地グルメが存在します。レーゲンスブルクのあるバイエルン州の地元料理は、日本人がドイツ料理を想像した時に浮かび上がってくるような肉料理がメイン。

「レーゲンスブルク・ヴァイスブロイハウス(Regensburger Weissbräuhaus)」では伝統的なバイエルン料理はもちろん、自家製ビールも楽しめます。

ドイツで旅をしていてよくあることですが、レストランの一品一品はとっても量が多いのです。日本の食生活に慣れていると食べきれないことも。そんな時は、軽めのソーセージ料理がおすすめ。

レーゲンスブルクソーセージサラダは、スライスされたソーセージにたっぷりのスライスオニオンとトマト、ピクルス、スライスパンがついてきます。お酢をベースにしたドレッシングに浸っているので夏にはさっぱりと。気軽に入りやすいので1人での利用にも向いています。

レーゲンスブルク・ヴァイスブロイハウス(Regensburger Weissbräuhaus)

住所:Schwarze Bären Straße 6, 93047 Regensburg, Germany

公式サイト:https://www.regensburger-weissbrauhaus.de/index.php/en/

今回は散策にぴったりな世界遺産の街、レーゲンスブルクを紹介しました。ドイツ旅行を計画する際には参考にしてみてくださいね。

[All photos by Mia]


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