<W解説>韓国で政治家への相次ぐ襲撃事件受け、近く身辺保護強化のTF発足=韓国メディアはある懸念を指摘
<W解説>韓国で政治家への相次ぐ襲撃事件受け、近く身辺保護強化のTF発足=韓国メディアはある懸念を指摘
聯合ニュースによると、韓国で政治家への襲撃事件が相次いで発生したことを受け、政界と警察は「要人の身辺保護強化タスクフォース(TF)」を近く発足させる。旧正月(今年は2月10日)以降の発足を目指し、現在、議論が進んでいるという。韓国では4月に総選挙を控え、今後、遊説活動などが活発となるのを前に、別途の組織が必要と判断したとみられるが、聯合はある懸念を指摘している。

先月2日、南部のプサン(釜山)で、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表が新空港の建設地の視察を終え、記者団の取材を受けていた際、近づいてきた男に刃物で左首付近を刺された。李氏は釜山大学病院に搬送され、応急措置を受けた後、転送先のソウル大学病院で手術を受けた。現場では、60代の男が逮捕された。男は警察の調べに「李氏が大統領になることを防ぎたかった」と供述。警察の説明によると、犯行の動機は、男の個人的な政治的信念によるものだという。男は「(4月の)総選挙で李氏が特定候補に公認を与え、多くの議席を獲得できないようにするため殺害を決めた」とも供述した。李氏は先月10日に退院し、既に公務に復帰している。

この事件から約3週間後には、与党「国民の力」のペ・ヒョンジン議員が、ソウル市内の路上で少年に襲われ、病院に搬送された。事件は先月25日、午後5時20分ごろ発生した。ペ氏はこの日、国会本会議に出席した後、「共に民主党」を糾弾する集会に参加。その後、ソウル市カンナム(江南)区に移動し、区内の建物に入った際、少年に「国会議員のペ・ヒョンジンか」と身元を確認された直後、後頭部を石で17回叩かれた。ペ氏は入院して手当てを受けたが、先月27日に退院した。この事件で現行犯逮捕されたのは15歳の少年だった。

韓国では、過去にも党代表ら要人が襲撃される事件が起きている。2006年には当時、野党第一党のハンナラ党代表だったパク・クネ(朴槿恵)元大統領が、ソウル市内で地方選挙の応援演説を行っていた際、男に襲われた。朴氏はカッターナイフで切り付けられ、右頬を約60針縫う重傷を負った。朴氏は2022年3月にも南東部・テグ(大邱)の私邸前で群衆から焼酎瓶を投げつけられた。この際は十数人の警護員による機敏な対応によって守られ、朴氏にけがはなかった。

また、2022年3月には、当時、「共に民主党」の代表を務めていたソン・ヨンギル氏が大統領選挙前の支援遊説中、男に鈍器で頭を叩かれる事件が起きている。

政治家への襲撃が相次いだことを受けて、政界と警察は先月、「身辺保護強化タスクフォース(TF)」を設置する方針を表明。聯合ニュースによると、韓国警察庁はこのほど、主要政党にTFの趣旨や規模、役割分担などをまとめた説明資料を送った。各党から返信があれば、追加協議を経て、旧正月後にTFを稼働させるとみられるという。

韓国は4月に総選挙を控えており、TFは今後、各地で展開される選挙運動などに対して脅迫や危険情報があった場合、情報を共有する。また、警察はパトロールを強化するほか、新たに編成した身辺保護チームを、政党が事前公開した街頭演説などの公式日程に投入する。

一方、聯合ニュースは「警察の治安力が政治家の保護に集中すれば、国民の治安は『二の次』になるとの懸念も提起される」と指摘。「そうなれば、政治家の特権を非難する声が上がりかねない」と懸念を示した。

韓国では、昨年7月~8月にかけて、ソウル市内で無差別殺傷事件が相次いだ。比較的、治安が良いとされるソウルで立て続けに凶悪事件が発生し、市民らの不安は高まり、警察は一時、全国の主な密集地域に機動隊員や装甲車まで配置して警戒を強化した。

TFの発足によって、国民の安全・安心が疎かになるようなことがあってはならない。

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