今年6月に大統領に就任した李氏は、低迷する既存の主力産業に活力を吹き込み、新たな成長動力を確保する上で、AIが中核的手段とならなければならないとの考えのもと、韓国を「AI 3大強国」に飛躍させる目標を掲げている。産業にとどまらず、AIで経済や社会全体の発展を目指す、AIエコシステムの構築しようとしており、AIインフラやデータを拡充し、ネットワークとしてつなげていく「AI高速道路」の構築を国政課題に位置付けている。李氏は就任早々、南東部のウルサン(蔚山)で開かれた「AIグローバル協力企業懇談会」に出席。SKグループのチェ・テウォン会長や、Kakao(カカオ)のチョン・シナ代表、サムスンSDSのイ・ジュニ代表ら、韓国を代表するAI関連企業のトップと意見を交わした。
また、組閣では、AI関連政策を所管とする科学技術情報通信部(部は省に相当)の長官に、電子・通信機器大手LGグループのAI研究組織、LG AI研究院で院長を務めていたペ・ギョンフン氏を指名した。ペ氏は米スタンフォード大学の「人間中心AI研究所」(HAI)が4月に発行した「AIインデックス報告書」に、今注目のAIモデルとして取り上げた韓国唯一のモデル「EXAONE3.5」をLG AI研究院在籍時に作ったことでも知られる。ペ氏は長官就任前、「われわれが(AIで)世界3位になったとしても、米国、中国とあまりにも差が大きい。1、2位に近接した3位にならなければならず、実際のところ、時間はあまり残っていない」とした上で、「『AI 3強』の目標を2~3年以内に必ず達成しなければならないという使命感があり、所属していた企業(LG)で良い事例をつくったと考えている」と話していた。AI分野のスペシャリストを李政権の科学技術情報通信部の初代長官に起用したことからも、李氏の「AI 3大強国」実現への本気度がうかがえる。韓国政府がことし8月に発表した「新政権の経済成長戦略」の一つにも「AI 3大強国」を掲げた。
李氏は就任後、OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)やNVIDIAのジェンスン・ファンCEOら世界のAI企業のトップらと相次いで会談。国際的なネットワークの拡大を進めてきた。そして、今月5日には、大統領府にソフトバンクグループの孫正義会長兼社長を迎えた。面会には前出のペ長官のほか、大統領府のカン・フンシク秘書室長、キム・ヨンボム政策室長、キム・ジョングァン産業通商部長官らも同席した。
李氏は冒頭、自身の政権が韓国を「AI 3大強国」にするとの目標を掲げていることに触れ、孫氏に「良い提案と助言をお願いする」と述べた。孫氏が率いるソフトバンクグループは、OpenAI(オープンエイアイ)やOracle(オラクル)などの米国企業とAIインフラ整備計画「スターゲート」を推進するなど、AI分野に大規模な投資を行っている。
また、韓国メディアのイーデイリーは「孫会長はこれまでも韓国の大統領らと会談を行い、未来の成長産業全般における洞察力を共有し、多くの助言を行ってきた」とし、「故キム・デジュン(金大中)元大統領は1998年に孫会長に会い、韓国経済を立て直す助言を求め、孫会長は超高速通信網の重要性を強調した。故ノ・ムヒョン(盧武鉉)元大統領と会談した席では、オンラインゲーム育成の必要性を強調し、パク・クネ(朴槿恵)元大統領と会談した際にはモノのインターネット(IOT)、AI、スマートロボット、戦略分野の重要性を強調している」と紹介した。
李氏は孫氏との面会で「AIを上下水道のように全国民が利用できる基本的なインフラにする」と述べた。一方、孫氏は「今後、人間の頭脳より1万倍も賢い人工超知能(ASI)が登場する」と予測。重要なのは、人類と同程度の知能を持つ汎用人工知能(AGI)ではなく、ASIがいつ実現するかだとし、「ASIが次に差し迫った技術だ」とした。
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