<W解説>外国人観光客の受け入れを始めた北朝鮮、サッカー女子日本代表の対北朝鮮戦の開催地はどうなる?
<W解説>外国人観光客の受け入れを始めた北朝鮮、サッカー女子日本代表の対北朝鮮戦の開催地はどうなる?
北朝鮮の首都・ピョンヤン(平壌)に今月9日、ロシアからの団体旅行客が到着した。北朝鮮は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受け、感染対策として2020年1月以降、厳格な入国制限を行ってきた。今回はコロナ後、初の外国人観光客の受け入れとみられる。北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、かねてから観光産業の発展に強い関心を示しており、北朝鮮において、観光振興がコロナ禍後の優先推進事項の一つになっているとの見方も出ている。

北朝鮮は新型コロナの大流行を受けて2020年1月末に早々と国境を封鎖。ウイルスや感染者の流入を徹底的に阻止しようとした。世界各国に感染が広がる中、真偽は不明なものの北朝鮮は長らく国内に感染者は一人もいないと主張し続けた。しかし、一昨年5月、感染者の確認を初めて発表した。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は当時、「2020年2月から2年3か月間にわたって強固に守ってきた非常防疫戦線に穴が開く国家最重大の非常事件が起きた」と報道。それまで、「感染者ゼロ」を主張し続けてきただけに、この発表は世界に衝撃を与えた。

一昨年1月、北朝鮮は国境封鎖措置を一旦は解除したものの、前述のように感染者が初めて確認されたことを受けて再び封鎖。物流が滞り、頼みの綱である備蓄米も一気に減る事態となった。これにより、住民たちは飢えに苦しみ餓死者が相次いでいるとも伝えられた。

徹底した国境管理で、人・物の出入りを厳しく制限してきた北朝鮮だが、昨年7月の朝鮮戦争の休戦協定の締結から70年の記念行事にはロシアの国防相や中国共産党の政治局員らを招くなど、徐々に人の往来を再開させるようになった。8月には北朝鮮国営の高麗航空が、ピョンヤン(平壌)と北京の間、ロシアのウラジオストクの間で運航を再開させた。北朝鮮が国際航空便を運航するのは約3年半ぶりのことだった。旅客機には国境封鎖で中国やロシア国内に足止めされていた北朝鮮の人民が、帰国するために続々と搭乗した。さらに9月下旬には、入国後2日間の隔離措置を取ることを条件に外国人の入国を許可した。

そして、今月9日にはウラジオストクからロシア人の団体旅行客が搭乗した高麗航空便が北朝鮮に到着した。北朝鮮が昨年8月にコロナ対策の国境封鎖を解除して以来、初の外国人団体旅行客とみられている。一行は4日間の日程で平壌や東部のスキー場などを訪れた。このツアーは、最も安いクラスで日本円で約11万円だといい、報道関係者を含め97人が参加したという。共同通信によると、同様のツアーは22~25日にも実施予定といい、共同は「北朝鮮が観光客受け入れを拡大する可能性がある」と伝えている。

AFP通信によると、ロシアはウクライナ侵攻により西側諸国から制裁を科されており、ロシア人が欧州や米国に旅行するのは難しくなっている。また、ロシアの国営タス通信が伝えたところによると、昨年、北朝鮮を訪問したロシアのラブロフ外相は、北朝鮮はロシア人にお薦めの旅行先になると話したという。

北朝鮮はロシアとの関係を強めており、昨年9月には金総書記がロシアを訪問した。ウクライナ侵攻のためにロシアが必要としている砲弾などの通常兵器を北朝鮮が提供しているとも報じられている。今月7日にも、ウクライナの首都キーウなど各地でロシア軍の大規模攻撃があったが、北東部のハルキウ州内に発射されたミサイル5発のうち2発は北朝鮮製とみられている。

友好国の旅行者の受け入れを再開した北朝鮮だが、それ以外の国の受け入れはどうなのか。今月24日にはサッカー女子代表「なでしこジャパン」が北朝鮮代表と対戦する予定となっている。「なでしこジャパン」が平壌に乗り込むとみられていたが、開催地はまだ決まっていないという。日本は、AFC(アジア・サッカー連盟)に対し、日本と北朝鮮間に飛行機の定期便がないこと、競技運営の観点から不透明な点が多いことから、中立地での開催を訴え、AFCはこれを受けて北朝鮮に対し、中立地を会場とするよう提案した。しかし、代替地の選択権は北朝鮮にあり、日本は決定を待つしかないという。日本協会の佐々木則夫・女子委員長は平壌開催の可能性も「ゼロではない」としている。

Copyright(C) wowneta.jp