国民の力のソン・オンソク(宋彦錫)院内代表
国民の力のソン・オンソク(宋彦錫)院内代表
先月行われた韓国大統領選挙で公認候補が敗れ、政権の座を明け渡した保守系最大野党「国民の力」が、結党以来初の支持率10%台となった。韓国紙の東亜日報は、「大統領選の敗北後、党改革をめぐる内紛が連日続いており、党内では『党の存続自体が危うい』との声が上がっている」と伝えた。

先月3日に投開票された大統領選は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施された。革新系「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏、「国民の力」からはキム・ムンス氏、保守系「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)氏らが立候補していた。「非常戒厳」を宣言した尹政権への評価が最大の争点となった。開票の結果、李在明氏が1728万7513票(得票率49.42%)を獲得して当選を果たした。キム氏は1439万5639票、李俊錫氏は291万7523票を得たが、及ばなかった。選挙前に与党だった「国民の力」の敗北に、当時、公共放送KBSは「3年で野党に政権を渡すことになり、党内のリーダーシップの不在と分裂など、危機的状況にあると評価されている」と同党の窮状を伝えた。

李氏の大統領就任に伴い、「共に民主党」は3年ぶりに与党に復帰した。一方、「国民の力」は、尹前大統領による「非常戒厳」宣言が影響して、中道層や一部の保守層の支持を失うこととなり、苦戦した。敗れたキム氏は、選挙対策委員会の解散式で、「国民と党員同志たちに謝罪を申し上げる」と頭を下げた。同党の選挙対策委員会は論評を発表し、敗北を受け入れた上で、「既得権益と安易な態度を捨て、身を切る思いで改革に取り組んでいく。失った信頼を取り戻し、有能で責任ある政党に生まれ変わる」と再生を誓った。

野党に転落した「国民の力」は、尹前政権で政権運営に失敗した勢力の退陣や、世代交代など、全面的な刷新を迫られることとなった。こうした中、今月1日、党の臨時執行部トップの非常対策委員長にソン・オンソク(宋彦錫)氏が就任した。宋氏は南東部のキョンサンプクト(慶尚北道)キムチョン(金泉)市出身の62歳。パク・クネ(朴槿恵)政権で企画財政部(部は省に相当)の予算室長や第2次官を歴任した。韓国メディアによると、派閥職は比較的薄いとされているが、尹前政権では尹氏に近い「親尹派」とされた。

2日に就任会見に臨んだ宋氏は、尹前大統領による「非常戒厳」宣言について、「責任を痛感し、改めて心から謝罪する。こうした過ちを二度と繰り返さないようにという覚悟を刻み、再出発する」と述べた。その上で、「野党らしい野党に生まれ変わり、批判とけん制の役割をしっかり果たす」と決意を示した。非常対策委員会は新しい党執行部が決まるまで一時的に運営される組織。

立て直しを急ぐ「国民の力」に、今月10日、衝撃的な数字が突きつけられた。世論調査会社の韓国リサーチ、エンブレイン・パブリック、ケイスタットリサーチ、コリアリサーチの4社が、今月7~9日にかけて全国の成人男女1000人余りを対象に実施した世論調査の結果、「国民の力」の支持率は19%で、前身の「自由韓国党」から政党名を変更して2020年に結党して以来、初めて10%台となった。この結果について、韓国紙の東亜日報は「大統領選敗北後、党内で人事刷新をめぐる混乱が続いたことが、支持率下落の主な原因になったと分析されている」と伝えた。

同紙によると、首都圏選出の、ある同党所属議員は取材に、「『革新』という言葉が嘲笑の的となっているのが我が党の現実で、国民の失望が反映された結果だ」と語った。また、同党の重鎮、アン・チョルス(安哲秀)議員は11日、自身のSNSに、「刷新して変化せよという国民の厳しい警告にも耳を塞いだまま、変化しようとする努力をせず、ひたすら既得権益の守護に没頭した結果だ」と批判し、「清算と革新だけが、『国民の力』を再び躍動させるだろう」とした。これに先立ち、安氏は7日、来月行われる予定の党代表選への出馬を宣言した。
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