APEC食料安全保障担当会合には21の国と地域の代表が出席した。テーマは「繁栄を分かち合うための農業・食料システムにおけるイノベーションの推進」。地球温暖化などで食料供給への懸案が高まる中、持続可能な農業生産を進めていくため、先進的な農業技術についての知識を共有した。出席した小泉氏は、情報通信技術を活用したスマート農業技術を通じ、農業の生産性向上に取り組んでいる日本の事例を紹介。「農業・食料システムの変革には万能な解決策はない。それぞれの取り組みや望ましい未来を共有することが危機に強く、持続可能なシステムを構築することになる」と述べた。
小泉氏は10日午後には北部のキョンギド(京畿道)パジュ市の稲作農家を訪れた。10ヘクタールの水田を視察し、米農家の話に熱心に耳を傾けた。また、生産コスト削減に向けた農協の役割などについて質問した。視察後、記者団に「世界中の情勢、現場のことを学ぶことは、私にとっても農水省にとっても有益なことだと思う」と語った。
また、小泉氏はこの日、韓国の歴代大統領や朝鮮戦争の戦死者らを追悼する国立墓地「国立ソウル顕忠院」を訪れた。顕忠塔の前で献花し、黙とうをささげた。日本の政治家では、2006年に当時の安倍晋三首相、2011年に当時の野田佳彦首相、最近では今年1月に岩屋毅外相が顕忠院を訪れている。
11日には日中韓3か国による農業担当の閣僚会合が開かれた。会合は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2018年に中国・北京で開かれたのを最後に中断。今回7年ぶりに開かれた。日本からは小泉氏、韓国からはソン・ミリョン農林畜産食品部(部は省に相当)長官、中国からは韓俊農業農村相が出席した。韓国の通信社の聯合ニュースによると、会合で3氏は、気候変動や国境を越えた感染症の拡散、供給網(サプライチェーン)の不安定化など農業分野における複合的な問題に対する共通の認識を基に情報共有や共同対応の重要性を確認。▼スマート農業の技術開発▼炭素中立型農業への転換▼若い農業者の育成など、各国の重点政策を中心に相互補完的協力を拡大することで一致したという。小泉氏は「農業分野で一致した対応をすることで、食料の安定供給や農村の活性化といった課題を解決できる。日中韓の友好を世界に示すことは非常に重要だ」と述べた。会合の後、3か国は、最先端技術や再生可能エネルギーの活用を通じて気候変動対策に共に取り組んでいくとの共同声明を採択した。また、鳥インフルエンザなどの伝染病に対応するため、今後、3か国で定期的に会合を開いていくことで合意した。
小泉氏はその後、ソン長官と個別に会談。日韓の農相が会談するのは2018年以来。聯合によると、両氏は2027年に横浜市で開催される国際園芸博覧会や、韓国の農食品の日本進出拡大など、様々な分野で意見交換を行ったという。ソン氏は「両国は類似した農業構造と課題を共有しており、実質的な協力を通じて相互の競争力と持続可能性が高められる。今回の会談が両国の農業協力の幅を広げる出発点となることを願っている」と述べた。
この後、さらに、小泉氏はチョ外相とも会談。韓国が続けている日本産水産物の輸入規制の撤廃を求めた。
今回の小泉氏の韓国訪問を韓国メディアは注目した。小泉氏が日本国民に人気が高い政治家で、将来の首相候補の一人であることは韓国でも知られており、知名度が高い。聯合ニュースは、ソン農林畜産食品相との会談で、小泉氏が「2週間前に妻と子供たちが休暇でソウルに来た」と話したことなどを紹介した。また、韓国メディアは11日のチョ外相との会談に特に注目。「特別な懸案がないのに、外相が他国の他省庁の大臣に会うのは異例」と報じた。ヘラルド経済は「小泉農相が事実上、『次期首相』の動きを開始したとの見方が出ている」とまで伝えた。一方、韓国外交部(外務省に相当)は今回のチョ外相との会談について「わが政府は、より強固で成熟した韓日関係の構築のため、多様な高位級との交流を推進しており、今回の面談もその一環だ」と説明した。
Copyright(C) wowneta.jp