バリ島の人々はバリヒンズー教の祈祷行事をベースに生活していると言っても過言ではありません。
南の島でのんびり暮らしているかと思いきや、少なくとも2日に1度は祈祷行事があり、その準備と日々の祈祷とで大忙し!

行事の日程も想像以上に複雑で、対外国客用に使われている西洋歴とは異なる暦で進行されています。
それも、ウク歴とサカ暦という2つの暦を組み合わせた独自の暦で、馴染みのない私たち外国人にとっては一体どういう日程でバリ島の人々が行事を行っているのかサッパリわかりません
。難解なのはバリ人も同様のようで、「バリカレンダー」と呼ばれる独自の祈祷行事カレンダーがローカル生活には欠かせないようです。




数えきれないほどの祈祷行事の中でも代表的なのが「鉄の日」です。
かつては包丁やハサミなどの家庭道具、斧やカマなどの農機具への感謝をこめて祭っていたようですが、現代では、バリ島の主要交通手段であるオートバイや車をメインに祈祷が捧げられています。

主催者以外への行事開催のお知らせは、たいていその日の朝、突然です。
「鉄の日」も同様で、朝出かけようとすると大家さんが、
「あんたのバイクもお祈りしてあげるから、置いといて」
と声をかけてくれます。
ところがバイクや車がなければ出勤することができません。
出かける用事がある日はご辞退申し上げるしかありません。




バリ島に住み始めた頃はスタッフが突然仕事を休むことが頻繁にあるということだけでなく、それが「今日はおまつりなので」なんていう理由であることに、本当に驚きました。
ほかにも「雨が降っているので」とか、「今日は結婚式なので」など、日本で会社勤めをしていた頃には考えられない理由ばかり。
「おまつり」で突然休むって、いったいどういうことかと、悩んだ事もありました。




さらに、「おまつり」の翌日はたいてい休暇を取りたがる。
それも理解できませんでしたが、聞いてみると、彼らにとって「おまつり」は休暇ではなく義務であり、何より優先すべき事項なのだそう。
疲労も出費も伴う大変な勤労の日なのあります。
だから、「おまつり」の後には休暇が必要なのだとのこと。
近年は外資系の大きなホテルでは雇用条件のひとつに「おまつりに参加しない」という項目が盛り込まれているそうです。
雇用する側の外国人としては盛り込まずにいられない条件でしょうね。
ところが長年バリ島で過ごしてみれば、この、声掛けのタイミングや、彼らの生活様式もすっかり「いつものこと」。
慣れてくるものです。
彼らには彼らの価値観や生活があるのです。

そうした「おまつり」の中でも重要な「鉄の日」。
朝早くから僧侶がやってきて、特設祭壇でおごそかにマントラを唱えて祈祷が捧げられます。
そして、バイクや車にお浄めの聖水をふりかけてお祓いし、日本でいうと「しめ縄」に似た祈祷飾りを取り付けたら終了です。
この飾りは自然に取れてしまうまでつけっぱなしにされています。
街中でこのような飾りを付けた車やバイクを多く見かけたら、それは「鉄の日」の祈祷の後ということです。


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