<W解説>22日の北朝鮮・弾道ミサイル発射、その狙いについて日韓メディアから様々な見方
<W解説>22日の北朝鮮・弾道ミサイル発射、その狙いについて日韓メディアから様々な見方
北朝鮮が今月22日に弾道ミサイルを発射したことをめぐり、その狙いについて様々な見方が出ている。韓国では、南東部・キョンジュ(慶州)で31日からアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催される。韓国メディアなどは、北朝鮮がこれを前に挑発を狙った可能性を伝えているほか、これに合わせて米国のトランプ大統領が訪韓するのを前に、北朝鮮が存在感を誇示したとの見方を報じている。また、日本メディアからは、「21日の高市早苗首相就任直後に、日韓両国に対して軍事力を誇示する狙いがありそうだ」(時事通信)との報道も見られた。

北朝鮮は22日午前、南西部のファンヘプクド(黄海北道)チュンファ(中和)付近から北東方向に複数のミサイルを発射した。飛距離は約350キロ。ミサイルは日本海に届かず、北朝鮮の陸地に着弾したものとみられている。北朝鮮による弾道ミサイル発射は今年5月8日以来のことだった。

発射後、韓国大統領室は緊急安保状況点検会議を開いた。また、米国防省は22日、「米国は北朝鮮による行為を非難し、これ以上の不法で地域の不安定化を招く行動を控えるよう求める」などとする声明を発表した。在韓米軍も23日、声明を発表。「国連安全保障理事会決議に違反する行為の中止を求める。違法で不安定化を招く行為を強く批判する」とした。また、「米国は韓国と緊密に協議しており、両国の本土防衛のための対応態勢を維持することに集中している。米国の米韓同盟に対する公約は揺るぎない」と強調した。

一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、前日に「新たな武器体系」である極超音速ミサイルの発射実験を実施したと報じた。同通信は「実験は潜在的な敵に対する戦略的抑止の持続性と効果を高めるための国防力発展計画の一環だ」とした。ミサイルの具体的な機種などは伝えられなかったが、韓国の通信社、聯合ニュースは「今月初旬に朝鮮労働党創建80年に合わせて実施した閲兵式(軍事パレード)に登場した極超音速滑空体(HGV)形状の弾頭を装着した『KN23』系列の短距離弾道ミサイル『火星11マ』の可能性がある」と報じた。

22日のミサイル発射について、韓国紙のハンギョレは「慶州でのAPEC首脳会会議の開幕を9日後に控えてのことだ。慶州に集結する米日首脳に向けた『計算された行動』といえる」と指摘した。同紙は「今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射で注目されるのは『発射の時期』」と指摘。「北朝鮮は今年上半期だけで4回弾道ミサイルを発射したが、(韓国の)イ・ジェミョン(李在明)政権が発足(6月4日)してからは、8月23日に地対空ミサイルの発射実験を行っただけで、弾道ミサイルは発射しなかった」とした上で、「ところが、北朝鮮が今回、『APEC首脳会議開幕9日前』という時期を選んで発射したのは、慶州で開かれる韓中首脳会談と韓米首脳会談など、大型政治イベントに向け『存在感を誇示』した側面が強い」と解説した。また、東亜日報も「APEC首脳会議を狙った武力示威」との見方を伝えた上で、「慶州APECに合わせたトランプ米大統領の訪韓を控えて存在感を誇示したものとみられる」と報じた。聯合ニュースも同様の見方を伝えたが、APECに合わせて開かれる米韓・中韓首脳会談などで北朝鮮問題が議題になると予想されていることを補足した。

一方、日本経済新聞など一部の日本メディアは、APECに加え、発射前日に高市早苗政権が発足したことも意識した可能性を伝えた。22日から本格始動した高市内閣は、北朝鮮のミサイル対応からスタートした。この日の朝、高市氏は外出の予定を変更して官邸入りし、状況の報告を受けた。その後、記者団の取材に応じ、ミサイル情報の共有などを含め、日米韓で緊密に連携して対応に万全を期していると強調した。

高市氏は、23日には北朝鮮による拉致被害者家族と官邸で面会した。拉致問題の解決に向けて「あらゆるチャンスを逃さない。(米国の)トランプ大統領をはじめ、韓国首脳との面会の際には拉致問題について話し、協力を求めていく」とした上で、「(北朝鮮の)キム・ジョンウン(金正恩)委員長(朝鮮労働党総書記)との首脳会談に臨む覚悟もできている」と述べた。

Copyright(C) wowneta.jp